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この再会に心より感謝を アレクサンドル・ベリャーエフ:著 田中隆:訳 『ドウエル教授の首』

 

 以前このブログで『合成人間ビルケ』という本について書いた事があった。自分が小学生の頃に読んだ思い出深い本だ。その時に「再販しませんか」と書いていたのだけれど、先日書店に行った際に『ドウエル教授の首』というタイトルで新たに単行本が出ているのを発見し、小躍りしてしまった。訳者と出版社は違えど、これこそ自分が追い求めていた作品。未知谷様、そして新訳をされた田中様、ありがとうございます。お陰でこの物語と数十年振りに再会する事が出来ました。

 自分と同じ様に、子供の頃図書室で『合成人間ビルケ』と出会ってその後探し続けているという方、今が再読のチャンスですよ、と一応宣伝。いや、そんな人が自分以外にどれだけいるのか知らないけれど。ちなみに岩崎書店様版、馬上義太郎氏訳の『合成人間ビルケ』は、ライトノベル風というか漫画風の表紙になり『いきている首』というタイトルになったものであれば現在でも手に入る模様。

 さて、作品について、そして著者であるベリャーエフ氏については以前書いた感想をお読み頂くとして、大人になってから、子供の頃に夢中で読んだ作品と再会出来るのはやはり嬉しい。何だか長い間会う機会が得られなかった親友とようやく再会したかの様な、心躍る様な嬉しさがある。そしてこういう時は本読みをやっていて本当に良かったと思える。

 小学生だった自分がこの物語を読んで抱いた想いと、今大人になった自分が本作を読んで抱く想いは、当たり前だけれど全く同じものではない。時代は移り変わり、自分ももう子供ではない。政治経済や国際情勢は刻一刻と変化しているし、科学技術や医療技術の発達も目覚ましいものがある。そういう意味で自分達を取り巻く環境も大きく変化しただろうし、自分達の側もその変化した社会に適応する為に自分自身の生き方や価値観を変化させて来た筈だ。でも不思議な事に、世界や社会がこれだけ変化し、自分もまた大きく変わってしまったというのに、それでもなお過去の自分と今の自分の中に、同じ作品に触れた時に『通じる』部分がある。ひとつの作品が、過去の自分と今の自分を繋いでくれた様に感じる瞬間がある。その不思議な感覚を何と言えば良いのか、上手い言葉が浮かばないのだけれど、そんな瞬間を得られた時に、自分は幸福を感じる。

 これから先も、自分はまだ多くの本を読んで行くのだろうと思うけれど、それがまた、今の自分から未来の自分に向けたメッセージというか、財産になって行くのかもしれない。何年か後になってまた同じ物語を読み返した時に、未来の自分は何を思うのだろう。そして、その時の自分は今の自分と通じ合う心を、まだ持っていられるだろうか。

  

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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黒犬

Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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