硬派な警察小説に、アニメ的な魅力を・月村了衛『機龍警察』

 

 5月は更新をさぼり気味ですが、一応まだ生きております……。
 さて、某所で「『攻殻機動隊』とか『機動警察パトレイバー』とか好きな人は読むといいよ」という感じで紹介されていた『機龍警察』をようやく読了。次は『機龍警察 自爆条項』だな、という所なのだけれど、確かにこれはその手の作品が好きな読者ならかなり楽しめると思う。自分もこういう作品は好物。

 作品紹介で「ハードボイルドなパトレイバー」みたいな書き方をしている方もいたと思うのだけれど、自分としてはそれは形容矛盾な気がする。パトレイバーは『特車二課壊滅す!』だの『火の七日間』だの『VS』だの、「下手をするとレイバーがまるで出て来ない悪ノリとおふざけで固められたサイドストーリーに旨味成分が凝縮されている感」があるので、それをハードボイルドにしたとすると、「焼き過ぎて硬くなった肉」を想像してしまって美味しくなさそうな気がしてしまう。

 もちろん『機龍警察』はそんな事はなく、硬派な警察小説を軸に、士郎正宗の漫画『アップルシード』に登場するパワードスーツ『ランドメイト』の様なメカ成分『機甲兵装』を加え、更に『龍機兵(ドラグーン)』『ゴブリン』『バンシー』等、中二チックなネーミングセンスで味付けをした、素材の旨味が生きている良作。機甲兵装『ゴブリン』の密造コピーが『ホッブゴブリン』とか、サブカル好きからすると「あるある」感があふれる設定にも思わずニヤリとさせられる。名前的に密造コピーの方が強そうだけど。

 自分は作者の月村了衛氏について詳しく知らなかったのだけれど、ネットを見たら元々はアニメ脚本畑の方らしく、それを踏まえると『機龍警察』が持つサブカル方面との親和性の高さも頷けるというもの。『NOIR(ノワール)』とか懐かしいな。「そういえばあったあった」という感じ。『天地無用!』とかにも関わってた人なのか。あの作品は友人が好きだった記憶が。とかなんとか過去の記憶を掘り返していると自分がいかに年を食ったか思い知らされるのでこの辺にしておこう。

 作品単体に話を戻すと、『機甲兵装』の様なアニメ的、SF的ガジェットを登場させつつ、その物語はどこまでも硬派に警察小説として描き切る所が本作の特色だと思う。
 『龍機兵』を擁する警視庁特捜部とSATとの確執、暗躍する裏社会の組織、戦場を渡り歩く傭兵達、『龍機兵』の搭乗員である警視庁特捜部突入要員達の過去と因縁、そして、単なる新型兵器以上の意味を持つ『龍機兵』の謎。それらが渾然一体となって展開される物語は、非常に『読ませる』ものに仕上がっている。本作が小説デビュー作との事だけれど、長年脚本家として様々な物語を描いて来た経験に裏打ちされたストーリー展開は安定感があり、読み進めるにつれて作品世界にぐいぐい引き込まれる。これは楽しい。

 自分は本シリーズを読み始めるのが遅かったので、ちょっと出遅れた感はあるのだけれど、これからどんどん読み進めて追い付こうと思う。

 

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映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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