『es[エス]』

 明るい話題の直後にこの上なく暗い話題を振ってみる。これが自分のバランス感覚。

<広島少年院の教官4人を逮捕 収容少年らに暴行容疑>

 人間、権力を与えられればその範囲内で最大限自分に有利な結果を引き出そうとする。
 セクハラとかパワハラとか、或いは虐待とか拷問とか、軽いものから重いものまで内容は様々だが、人間の理性や道徳心や自制心等というものが本能的な欲求の上に張り付いた薄皮の様なものだと仮定すれば、それらが磨耗した人間に権力が与えられた場合どうなるかは容易に想像できる。

 別にこの事件で逮捕された連中が極度に暴力的な傾向を持っていただとか、生まれつき異常だったとかそういう事ではない。そう考えた方が安心できるという気持ちは判るけれど、現実はそんなに甘くは無い。
 例えば自分も今は一介の会社員に過ぎないが、ある日突然に刑務所の看守をやれと言われたら、その権力をどう使うだろう。その答えが、この『es[エス]』という映画にある。

 このドイツ映画は1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われたスタンフォード監獄実験を元にしている。(脚本は映画向けに相当脚色されている様だが)
 実験ではまず被験者を囚人役と看守役の2チームに分け、擬似刑務所のセットを用いて実際に囚人生活、看守生活を体験させる。そうすると両者は次第に各々の役割に飲まれて行き、囚人や看守らしい振る舞いをする様になる。
 当然実験なので看守役も全員特別な教育や研修等を受けていない全くの素人なのだが、これが次第に権力を使って囚人を追い込んで行く様は下手なホラー映画より数段恐ろしい。

 昨日まで『凡人』だった人間が権力を与えられた瞬間に豹変する。

 自分だけがその例に当てはまらないなどと誰が言えるだろう。少なくとも自分はそこまで自信過剰にはなれない。現実に広島少年院で行われた事も別に特別な行為ではなく、少し気を緩めればいつでもそうなる可能性を孕んだものだと言えるのではないだろうか。

<関連項目>
Wikipedia『スタンフォード監獄実験』



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黒犬

Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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