沖縄の米軍基地移転問題が解決出来ない、本当の理由(1)

 最近ニュースはこればかり。まあ他にCOP15とかもあるけれど、でもどちらにも共通して言えるのは、日本の外交姿勢というよりも、むしろ自分も含めた国民全体の意識問題が根幹という気がする。

 米軍基地の問題は、日米安保だとか日米外交上の諸問題が絡む事なので、本来はこんな所でぐだぐだ語っていても何ら進展しないし生産性も無いのだけれど、これをもっと単純化して考えれば意外と簡単な解決法はあると思う。皆その解決法について一度は考えるだろう。ただ、やらないだけで。

 米軍基地というのは、言い換えれば『公共的にはそれが無いと困るのだけれど、近所にそれがあるのは勘弁してくれ』というものだ。「いや、日本に米軍基地なんて無くていい」という人もいる事は理解した上で、ここでは仮に『無いと困る』という前提で書く。在日米軍が具体的に何の役に立っているのかと言われれば、極東の軍事バランスの安定でも何でもいいのだけれど、とりあえず現状では日本政府の姿勢として『必要』という方向性なので、ここではそれを議論の前提とする。個人的な見解はいったん脇に置く。

 その上でこういう、必要なのは判っているけれど近くにあるのは嫌なものについて考えてみると、米軍基地以外にもそうしたものは数多くある。例えば刑務所とか、ゴミの埋め立て処分場とかね。そして米軍基地であれば沖縄がその負担を負っている様に、何処かで誰かがリスクを引き受けている事によって、他の国民も広くその恩恵を受けられるというものは枚挙にいとまがない。敢えて『犠牲』とは書かないけれど。

 例えば地元の県には原子力発電所がある。そこでは当然電気を作っているのだが、その電気は地元で消費されるのではなく、首都圏に送電されている。だから運営も東京電力が行っている。
 地元のメリットは、雇用の創出や、原子力発電所がある事によって国から出る交付金等がある。デメリット、リスクとしては、原子力発電所のトラブルによる放射能汚染の危険性等があるだろう。「リスクって言ったって、チェルノブイリ原発事故の様な酷い事故が起こる可能性なんてほぼ無いんだし、それで金が貰えるなら地元万々歳じゃないの?」という向きもあろうが、「じゃあ、貴方が原発の隣に住みます?」と言ったら大抵の人は嫌がるのではないか。
 それに、全国版のニュース等ではあまり大きく取り扱われないだろうが、原発というものもその危険性の認識とは裏腹に、細かいトラブルは結構頻繁に起きている。人の作るもので完璧なものなど無い。

 その他にも、原発の問題点として『解体が出来ない』事がある。
 原子力発電所は、稼働させている間は放射性廃棄物を出し続ける。だがもっと問題なのは、耐用年数が過ぎて炉心を停止させ、解体しなければならなくなった時に、完全に解体して更地に戻す手段が無い事と、仮に解体出来たとしても、炉心等の超高レベル放射性廃棄物を大量に廃棄出来る処分場が存在しない事にある。
 大体、単なる鉄筋コンクリートの建物だって老朽化すれば取り壊される訳で、原子力発電所だって永遠に使い続けられるものではない。それを、そろそろ取り壊さなければならないという段階になってから日本も含めた各国が取った手段は『当初想定していた耐用年数を40~60年に伸ばす』というとんちの様なものだった。「最初は耐用年数30年のつもりだったんですけど、多分40~60年は持つんじゃないですかね?」というわけ。確かに解体は先送りに出来るけれど、そんなもの本当に稼働させてて問題無いのかっていう事と、解体にかかる莫大なコストの問題、放射性廃棄物の処分問題等を先送りにしただけで何の解決にもなっていない。

 こうした問題を抱えながら地元は原子力発電所を引き受けて、首都圏の電力供給に貢献している。そうする事で日本人、特に首都圏在住者は原子力発電による恩恵を受けるが、それは自分の地元の様にそのリスクを引き受けているものの存在によって支えられている。

 沖縄の問題に話を戻す。在日米軍基地が日本の国益上必要不可欠だと仮定して、その負担が沖縄にのみ集中している事が問題なのだとすれば、問題を根本的に解決する為の手段は県外のどこかが基地を引き受ける事しかない。本当にシンプルな話だし、そんな事は子供でもわかる。
 ただそれが出来ないのは、結局自分も含めた沖縄県民以外の日本人は、口で何と言おうが自分の住処の近くに基地が移転して来るなんて嫌だと思っているからだ。沖縄が基地を背負っていてくれれば、自分の所はリスクを負わずに基地の恩恵だけを受けていられると思っているからだ。言い換えれば「電気が必要なのは理解しているけれど、原子力発電所が近くにあるのは嫌」という事だし、「刑務所の必要性は理解しているけれど、近所にあるのは嫌」という事だ。そういう本音を言わないで、『長年の沖縄県民の負担を思うと、基地問題を何とかしなければならないと思います』的な事を声高に語ってしまう県外人がいる事がまず問題だし、そこまで「心中お察しします」的な事を言うんだったら基地の一つも引き受けろよと思う。でも、結局は誰もやらない。

 誰もやらないという事は、国民の多くは結局基地問題をそこまで真剣に考えていないという事か、もしくは逆に、考えに考え抜いた結果、この問題については沖縄がリスクを負ってくれている方が自分達にとって有利という判断をしたのかの二択だろう。だから基地問題が解決しないのは、現政権が無能だからでもアメリカが強硬だからでもなく、結局は自分達国民の意識問題なんだろうと思う。随分穴のある持論だと思うけれど、次回に続く。

テーマ : 沖縄問題
ジャンル : 政治・経済

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Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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