立てよ農民・荒川弘『百姓貴族』

 漫画家として『鋼の錬金術師』をヒットさせる前は北海道で農家をしていたという、本人曰く『父方・母方ともに代々北海道開拓農民の血筋という濃縮100%百姓』の荒川弘氏による農家エッセイ漫画。面白い。

 荒川氏の実家は酪農と畑作の両方をやっているのだけれど、かく言う自分も母方の実家が小規模ながら同じ様な事をやっているので『ああ、あるある』というシーンが多くて楽しかった。まあドナドナっぽい場面ではちょっとホロリと来るものもあったけど。

 実際、農家にとっては当たり前の事でも、一般のご家庭ではまず知らないであろう事というのはある。例えば『乳牛は年がら年中、何もしなくても餌さえ食わせとけば乳を出す』と思っていたウチの父は、農家の娘である母に『妊娠、出産してない牛が乳なんか出すか!』と激しく突っ込まれるまでその事実を知らなかったらしい。いや、単にウチの父がうっかりさんなだけとも言うが。
 他にもこの漫画の内容から引用するなら『国産牛と和牛の違い』とかね。そういう部分を、決して内輪ネタにならない様に、誰にでも分かる形でまとめてくれているので、農業や酪農なんて全く知らないという都会育ちの方にも、いや、そういう方にこそお薦め出来る内容になっていると思う。

 自分も実際農業なんてやっていない訳だけれど、それでも車で数十分の距離で母方の実家が農業をやっていると、何となく生産者の大変さというものは理解出来る。作物を育てるという事もそうだし、家畜を育てるという事もそうだ。特に家畜をつぶすというと『残酷』という言葉が飛んで来るのだけれど、でも皆そうやって誰かが育ててくれた家畜を別の誰かが精肉してくれるから、スーパーでパックに入った肉が買えるんだぜっていうね。現実っていうのはそういうものだし、自分も丁度一家で実家に行ってた時に廃牛が連れて行かれる場面に遭遇してしんみりしてたら、家に帰ったその日の夕食はズバリ牛肉とかあったから言うのだけれど。(結局食べました。美味でした)

 つまり、母も含めて農家にとってはそういう光景っていうのは普通の事なのであって、逆にそういう場面でだけ『かわいそう』とか言いつつ普段は焼肉食べ放題とかで肉を無駄に消費する人々の方こそ理解不能なんだろう。自分で生産しているから、農家の子は食べ物を大事にするという事は学校で教えられるまでもなく常識として持っているし、命をいただくっていう事がどういう事か知ってもいる。今『食育』っていう事が重視されつつあるけれど、総合的な食育を行う為には、生産の現場を見せる、体験させるという事も大事なんだろうと自分は思う。
 でも、そういう大仰な教育の議論をする前に、こういう漫画があるんだけどっていう所からでも興味を持ってもらえると、生産者にとっても消費者にとってもいいのではないか。自分も最近牛乳飲んでないのでちょっと反省しております。中学、高校の頃は1日で1パックは飲んでたのに。うん、今度買おう、牛乳。

 

テーマ : 漫画の感想
ジャンル : アニメ・コミック

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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