シリアスさとギャグのさじ加減・内藤泰弘『血界戦線 -魔封街結社- 1』

 内藤泰弘氏の漫画が好きだ。
 代表作は『トライガン』『トライガンマキシマム』だけれど、どちらかと言えば自分は初期トライガンが好きな人間だ。その理由は、シリアスさとギャグのさじ加減が生み出す、キャラクターやストーリーの幅にある。もちろんマキシマムの後半にかけて物語はどんどん白熱して行くので、その盛り上がりはそれはそれで好きなのだけれどね。

 トライガンをご存知ない方に短く説明すると、地球から遠く離れた惑星を舞台にヴァッシュ・ザ・スタンピードという凄腕ガンマン(その実、筋金入りの平和主義者)が西部劇よろしくガン・アクションを繰り広げるというもの。本作の序盤では、大概ヴァッシュがいらない事件に巻き込まれたり、人助けの為に自分から首を突っ込んだり、自身にかけられた賞金目当てに追い掛け回されたりする事で物語が展開するのだけれど、そのドタバタ劇のコミカルさが際立つギャグ漫画的なパートと、主人公ヴァッシュが隠し持つシリアスさや、少年漫画的な熱いテーマが描かれるパートが絶妙のバランスを保っていて、キャラクターの魅力を引き出している。新装版も出るそうなので、未読の方はこちらもぜひ。劇場アニメも公開されるらしいしね。

 さて、作品は中盤からシリアスな展開が中心になり、ヴァッシュの命を狙う強敵との対決を軸にしたバトル漫画の様相を呈して行くのだけれど、そのシリアスさに振り切れる一歩手前の辺りが一番作品の幅があって自分は好きだ。
 何故かといえば、そのコミカルさありシリアスありのバランスで作られた世界の方が、結果としてどんな話でも展開させられる分、物語やキャラクターに良い意味での余力というか、幅があると感じるからだ。これが、メインストーリーが進むにつれてよりシリアスに研ぎ澄まされて行くと、余計なサイドストーリーが入り込む余地は無くなるし、戦いの場に立てないキャラクターを活躍させる事も難しくなってくる。これはシリアスさやダイナミックさ、物語のスケールを重視するとどうしても引き換えになってしまう部分なので、どちらを支持するかは読者の好みによる。

 という所まで語って、ようやく『血界戦線』である。

 かつてのニューヨークは一夜にして異界に侵食され、結界に閉ざされた。その異界と現世が交わる場所『ヘルサレムズ・ロット』は異形の怪物や異世界の住人が跳梁跋扈するのみならず、現世側の思惑が入り乱れる魔都と化していた。ニューヨークの崩壊から3年後、主人公のレオは数奇な運命に翻弄される様に、この街に足を踏み入れる事となる。

 前置き部分の話を踏まえて言うなら、『血界戦線』はまだ上手い具合にギャグとシリアスのバランスを保っている。
 主人公のレオ自身の戦闘能力は皆無に等しいので、荒事に関しては彼を取り巻く人物達が受け持つ事になるのだけれど、色々なトラブルに巻き込まれ、散々命の危機に陥りながらも逃げないレオは、少年漫画の主人公として正しい、好感の持てる人物だ。そしてこのレオの立ち位置が、作品全体がシリアスさやバトル漫画の方向に振り切れない為の一つのアンカーとして機能している様にも思える。

 これから各キャラクターの過去や因縁が明らかになって行くと、また作品のカラーも変わって行くだろうとは思うけれど、自分としてはもう少しこのまま、シリアスさとギャグとの境界線上で踏ん張ってもらいたい。この先楽しみな漫画がまた一つ増えた。

 

テーマ : 漫画の感想
ジャンル : アニメ・コミック

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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