ストーリー性とキャラクター性・高野真之『BLOOD ALONE』

 

 漫画を読んで、その作品のどこが気に入るかというのは人それぞれだと思う。同様に小説や漫画を評価する時に、どこに重点を置くかという事も人それぞれだ。自分の場合は小説にせよ漫画にせよ、割と作品のストーリー性や世界設定に重点を置いて読んでいる気がする。一時期は本当に設定が細かい作品ばかり選んで読んでいた事もある。

 まあ当然、物語がよく練られているという事は登場人物達も魅力的に描かれている事が多いし、その逆もまた然りなので、普通はそんなに意識的に両者を分けて評価するという事はしない。しかし、今回取り上げる『BLOOD ALONE』の様な作品は、言ってみれば設定オタク的な自分が気に入って買った作品の中では割と珍しい部類に入る。

 本作にも一応、メインとなるストーリーはある。しかし、最新刊の6巻が発売された現在、そのメインストーリーは一向に進展していない。作品はメインストーリーを置き去りにして、キャラクター性を全面に押し出す形で展開されている。

 とある事情によって吸血鬼となった少女『ミサキ』と、小説家という表の顔を持ちながら、姉を連れ去った吸血鬼を仇として追う男『クロエ』果たして二人を待ち受ける運命とは・・・という表のストーリーは既に『刺身のつま』程度のものでしかなく、読者にとっての『刺身』は二人の恋愛模様が描かれる日常風景だ。

 思わず、「お前、仇はもうどうでもいいのか」と突っ込まずにはいられないが、思えば単行本1巻の帯からして『吸血鬼モノの常識を打ち破るミサキとクロエのストレンジラブストーリー』とか書かれている訳で、むしろメインストーリーはこっちでいいんだよ、という事なのかも知れない。そして上記のキャッチコピーとほぼ同じ文句が単行本6冊全ての帯に書かれているという物凄い徹底ぶりに今気付いた。ある意味納得。

 だから本作を楽しもうとする時に、「一向に話が進展しないんですが」と言うのはたぶん間違いで、その恋愛模様も含めて全く進展する気配が無い日常をこそ楽しむのが正しい作法なんだろう。それもまた、たまにはいいかな、と思う。肩の力を抜くには確かにこれ位が丁度良い。

 

テーマ : 漫画の感想
ジャンル : アニメ・コミック

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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