ウンチクエンターテイメントという発想 西久保瑞穂・押井守『宮本武蔵-双剣に馳せる夢-』

 地方に住んでいて何が困るって、観たい映画が近場でやらないという事に尽きる。まあ最近は東京でも単館上映に近い映画もあるけれど。という訳で、ブルーレイで買ってみた。

 この映画、押井守氏の名前が前面に出て来ているけれど、監督は西久保瑞穂氏。押井さんは原案・脚本という事なのだけれど、出来上がった映画は完全に押井節炸裂の超ウンチク映画だった。タイトルから、宮本武蔵の戦いを描いた活劇を連想される方もいるかもしれないけれど、本作は『宮本武蔵の実像に迫る』事を目的として様々な考察を交えながら語られるウンチクと、その間に挿入される浪曲パートが織り成す『ウンチクエンターテイメント』としか言い様の無い映画に仕上がっている。

 自分は結構ウンチク好きなのだけれど、それでもウンチクをメインにして映画を作るとなると、それはなかなかハードルが高いだろうなと思う。何せ、一人のウンチク語りが延々と続くシーンを想像してもらえれば分かる事だと思うのだけれど、そんなものは全く絵にならない。それをどうやって映画にするかと考える時、解決策としてはやはり映像の見せ方に様々な仕掛けを仕込むという事しかない。

 押井守氏の映画で、同様のウンチク映画というと、『立喰師列伝』がある。本作にもそれに通じる部分は多い。立喰師列伝では『ミニパト』で確立された『パタパタアニメ』の手法に実写を取り込む事で映像作品としての面白さを持たせていたのだけれど、本作でも同様の仕掛けを見る事が出来る。

 単純にウンチクを語らせるのではなく、そのバックで3DCGのキャラクターによるコミカルなドタバタ劇をやらせたり、浪曲に合わせた剣劇パートを間に挟む事で、ウンチクがエンターテイメント化する。この、ウンチクをエンターテイメント化するという発想や手法は、映画の手法というよりもドキュメンタリー作品等を作る時の手法に似ていて面白い。

 そして歴史モノの面白さとして、『宮本武蔵って本当はこういう人だったんじゃないか』という様々な考察が出来る面白さがある。謎の多い人物だけに、今主流となっている人物像が正しいとは限らない。今までと違う武蔵の姿を描く事は、それだけでも十分面白さがある。後はそれをどう映像作品として落とし込んで行くかという事になるのだろうけれど、その点で言えば本作は十分成功しているのではないか。

 自分としてはこのノリで、1年に1本か2年に1本位、『押井守ウンチク歴史ドキュメンタリー』としてシリーズでやってもらえないだろうかと思う。もちろん映画でなくても、テレビの1時間番組とかでいいので。NHKさん辺りで予算付けませんか?いや、自分が観たいだけなんだけれど。

 

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