機会の均等と結果の均等

 何だかネット上の一部地域で話題になっていたこんなニュース。

 J-CASTテレビウォッチ『「月8万円」国が無条件支給 「うまくいく」説と「働かなくなる」説』

 何かこう、こういうものがまともに議題に上っているという事自体、暗澹たる気持ちになるな。
 自分もそんなに高給取ってる訳ではないので、たとえ所得税が45%に増額されても税金として取られる額がそんなに多いという訳でもないけれど、それでも自分の労働の成果を国が吸い上げて再分配するという方向は何か違うんじゃないかと思う。『働きたくないでござる』とかネタで言ってる連中なんて、こんな制度が実現したら本気で働かなくなるんじゃないか。
 悲しい事だけれど、自分は人間の善意とかをこれっぽっちも信用していない。今現在だって他人の努力の上にタダ乗りして寄生虫の様に生きている奴がいるのに、その動きを助長する様なものだろうと思ってしまう。

 というか、これって押井守の小説版『Avalon』で描かれていた世界に近付く第一歩だな。引用すると以下の通り。

 『「低収入高福祉」を実現した世界、つまり「飢えと病からは解放されたがそれ以上を望むことができない」世の中』
 『競争もないが発展もまた存在しない社会』
 『停滞が結果としてもたらす安定』

 どこで、誰が言っていたかは例によって忘れたけれど、『機会の均等』と『結果の均等』を履き違えるとろくな事にならないと思う。

 例えば、自分の住んでいる県は、有効求人倍率の全国ランクで言うと、ワーストから数えた方が早い。つまり、仕事が無い。仕事が無ければ当然収入も無い訳で、収入が無ければ食うに困る事になる。こういう時に、どうやって彼等の生活を保証すればよいか考えるなら、目指すのは先ず就業機会の均等なのであって、労働の結果として得られる賃金の代わりに国や地方自治体が生活保護と称して金を撒く事ではない筈だ。それが就業するまでの一時凌ぎのものである内はまだいいとして、人間は黙って金が貰える暮らしに慣れると努力する事を忘れる。

 この『ベーシック・インカム』という制度はそれについて書かれた本も出ている様で、本当はもう少しマシなものなのだろうけれど、自分が気に掛かるのは、これもやはり『結果の均等』を目指した制度に思える事だ。結果の均等を目指したシステムが当然のものとして受け入れられた社会では、その中で努力するか否かは個人の資質やものの考え方、もっと言えば善意やモラルによる。そして自分はそれほど人間を信じていない。

 『月8万円では食べていけないので、仕事を完全に辞めるわけにはいかない』という意見もある様だけれど、例えば自分が無職だとして、就業機会も就業意欲もなかったとする。なりふり構わず、取りあえず最低限生きていられればいいとなったら、自分なら同じ様なニートを何人か集めて共同生活をするね。一人8万もあれば、何人か集めて大部屋暮らしすれば十分生きて行ける。そしてもし賃貸物件や不動産を持っている側だったら、そういうニートを集めて詰め込み、賃料や生活補償費と称して収入を得る事を考えるかもしれない。今、年金受給者や生活保護受給者等を集めた施設が似た様な事をやって、搾取だと叩かれている様に。

 それに、子ども手当ての話もそうだけれど、『金を貰う事が当たり前』になってしまうのはやはり違和感がある。あの制度も、親が貰った金をギャンブルにつぎ込む可能性とか、金目当てで子供を集めて養子縁組し、実際は劣悪な生活環境に押し込む等の新手の虐待児童が生まれる可能性を少しでも考慮したのか。だって仮に、自分に一欠片の良心も無ければ制度上それが出来るだろう事は容易に想像出来る訳だから。

 人間の善意に立脚した制度を自分は信じない。人も社会も、そんなに綺麗ではない。

テーマ : 雑記
ジャンル : 日記

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No title

国が与えるべきなのは、「お金」ではなく、「お金を獲得できる機会」だと思います。
「~すれば、1万円あげる」とか、様々な分野でそういう機会を増やすことが大事だと思います。

ただ「1万円あげる」というのは一番良くないやり方です。
それでなくても日本の民度は欧米に比べて低いのに・・・。

>ponponさん

 どういう部分を指して民度が高い、或いは低いとするかは難しい事ですが、自分もまあ凡人を名乗っている位ですから、平均的な日本人像からそんなにかけ離れてはいないと思っています。他の国に比べて日本人の民度が低いというのであれば、自分も間違いなくその中に含まれている筈で、忸怩たる部分がありますね。

 さて、仰る様に、『ただでお金をあげますよ』というのは最も悪いパターンだと思います。何故なら、自分がそんな立場になったとしたら、速攻で堕落した生活を送る様になるだろう事が自分で想像出来るからです。例えば仕事を辞め、一日中ひきこもって好きな本を読み続けるとか。

 本文でも書いた通り、自分は人間の善意を信用していないですが、同様に自分自身のモラルや信念がそれ程強固なものだとも思っていません。「努力なんてしなくてもいいよ」と言われれば大抵の人はやる気を失ってダラダラ生きる様になるでしょう。そんな中で自分だけは真面目に生きてやるんだなんて、自分も騙せない様な嘘をつく気は無いです。だからこそ、こういう危ない動きには事前に反応しておかなければなりません。自分が堕落しない為に。
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Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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