抑止力という考え方

 『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』ほぼクリアした。全てのミッションはクリアしていないけれど、本筋のストーリーに関わる部分はクリア出来たので、まあクリアしたと言っても良いかなと。スタッフロール出たし。ただ、聞く所によるとここからがまた長いらしいのだけれどね。
 このゲーム、複数のプレイヤーで協力プレイする事も可能で、そういう仲間を『潜友(せんゆう)』と呼ぶそうなのだけれど、自分の場合、近くでやっている奴がいなかったので全て潜友抜きの自力プレイとなってしまった。まあ、何とかなるもんだ。高ランククリアは厳しいけど。

 さて、このゲームのキーワードの一つに『抑止力』というものがある。メタルギアシリーズは監督の小島秀夫氏が言う様に、『反戦・反核』をテーマにしているが、そうなると当然『核抑止』というテーマを避けて通る事は出来ない。
 現実でも、最近は鳩山総理が在日米軍の海兵隊に関して抑止力という言葉を含んだコメントを出していたけれど、では実際問題、こと戦争に関して抑止力ってどういうもんなの?という事を日本人が真剣に考えて来たかというと、それはかなり疑問だ。何せ総理大臣のコメントがあのレベルだという事を考えると、お世辞にもまともな議論が交わされているとは思えない。

 抑止力について考える上で、最もシンプルかつスケールの大きなものは核抑止だろう。つまり、核兵器を持っている国があって、その核保有国と自国との緊張が高まったとする。最悪核兵器を撃たれる可能性が否定できない場合、自国もまた核武装し、相手の核攻撃に対する報復手段としての核兵器を得る事によって、相手が核を撃てない状況を作り出す。端的に言えば、『撃たれたら撃ち返すからな!だから撃つなよ!』という事。
 この様に、自国の核兵器の存在が相手国から核兵器を使用される事を抑止するという考えが核抑止である。米ソ冷戦の構造を振り返れば、この抑止力はある意味で効果的に機能したと言える。日本人としてはこの上なく遺憾だが、日本もまたアメリカが提供する『核の傘』の恩恵にあずかって来た訳で、何を今更、と言われれば返す言葉もない。ちなみに核の傘とは日本の場合『アメリカの同盟国である日本が他国からの核攻撃を受けた場合、アメリカは自国が核攻撃を受けた時と同様に核による報復を行う』という事が約束された同盟関係を指す。まあ実際に核の傘が機能するかどうかは疑わしい部分もあるけれど、こればっかりはその時になってみなければ分からない。

 核兵器の使用以外にも、そこに至る前段階としての直接的な武力衝突もまた、最終的な核兵器使用へ繋がる恐れから互いに核を持つ大国間では抑止された。小競り合いが大規模な武力衝突に発展すれば、核が使用される可能性もまた高まるからだ。しかし、これが第三国における泥沼の代理戦争という悲劇を生んだ事を考えれば、核兵器の保有が大国間の戦争を抑止し、平和的安定状態を生み出したのだという核肯定論には異を唱えたい。

 前置きが長くなったが、では日本が戦争に対する抑止力としてどんなものを考え、どの様な外交戦略を取って来たかといえば、自分にはそれが見えない。単に地政学的に絶妙なポジションに位置しているというだけで、のんべんだらりと世の中渡って来ただけの様にすら思える。地政学的な優位点というのはつまり日本が他国と地続きの国境を持たない島国であるという事で、仮に日本が中国から突き出た半島だったり、朝鮮半島と地続きだったりした場合にはこんなにのんびりと構えてはいられなかった筈だ。まあその場合、日本が近代化以前に世界地図から姿を消していた可能性の方が高いだろうけれど。

 つまるところ日本は、この有利な場所に位置する国土の一部、主に沖縄を基地として利用したいアメリカの思惑に乗っかりつつ、核保有国であるアメリカとの同盟関係を維持し続ける事によって自国の安全保障体制を構築して来たという事だ。だからそのデメリットとして、日本はアメリカの意向に大きく逆らう事が出来ない。沖縄の基地問題はその最たるものだ。
 じゃあ結局『日本がアメリカにものを言える様になる為には、自前の核を持たなくては駄目だ』という話かというと、自分は少なくともそれをやった時点で日本は終わると思うし、国際社会の中で胸を張って「私は日本人です」なんて言える奴は一人もいなくなるだろうと思う。世界で唯一、戦争で核兵器を使用された国である日本が核武装するという事は、核兵器の有用性を全世界に証明するという事であり、核兵器の存在を全肯定するという事だ。日本がそんな馬鹿な事をする日は来ないと信じたいけれどね。

 では、核兵器も持ちたくない、在日米軍も海外に移転して欲しい、自衛隊を増強するのも勘弁して欲しい、憲法九条も一字一句変えたくない、アメリカの言う事に逆らえないのも問題だ、それでいて安全保障はしっかりしてもらわないと困るよ、というタイプの日本人はどうすべきかと言うと、もっと本気で抑止力について考えないとマズイんじゃないですかね、というのが今日の結論というか、グチ。特に鳩山総理に対する。

 自分は別に軍事的な抑止力だけが全てとか言うつもりもなくて、経済とか外交とか、ありとあらゆるものが抑止力として機能するだろうと思う。要は、手段は何であれ『あの国と戦争しても得なんかない』と他国に思わせる事が出来ればいい。ただ、多くの国が軍備を抑止力に据えているのはそれが依然として有用性が高いと思われているからであり、他の方法より信頼性が高いと思われているからだ。日本はそのカードを最初から捨てているに等しい訳だから、むしろ他国の数倍は抑止力というものについて真剣に考えなくてはならない。国際社会の中での日本の立ち位置とかね。経済成長著しい時はマネーパワーに物を言わせる事も出来たけれど、もうそういう勢いは無い訳だから。

 今の時代だからこそ、平和主義者の本気度っていうものが問われていると、自分は思う。

テーマ : 雑記
ジャンル : 日記

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Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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