盗作疑惑から絶版回収へ

 何だかネット上が騒がしいなーと思ったら、電撃文庫でデビューした作家の作品から、他作品の文章をそのまま盗用したと思しき箇所が多数発見され、絶版回収騒ぎに発展しているらしい。まあここではわざわざどの作品とは書かないけれどね。珍しいのは、今回は話のネタや設定をパクったという事ではなく、文章表現の丸パクリが問題視されているという事だろうか。

 自分はこの手の『パクリ疑惑』や漫画の『トレス疑惑』みたいなものって、どこまで作者個人の責任を追求出来るものなのか疑問に思う。確かに今回回収騒ぎを起こした作品は問題だったのかもしれない。比較検証しているサイトにも目を通したけれど、相当似ている部分があるのは確かな事だから。でも、人が何かを表現したいと思う時って、そこには既に発表されている作品から受ける影響が少なからずある。それがゼロになる事なんていうのは正直あり得ない。パクリが生まれる背景にはもっと構造的な問題がある様に思える。

 『~みたいな作品』を作りたいという憧れを抱く事自体は、何ら悪い事ではないと自分は思うし、その気持ちは排除出来るものではないと思う。今こうして自分が書いている文章だって、今までに自分が読んだ様々な文章から受けた影響の上に成り立っているのだし、そもそも『自分の考え』というものそれ自体が、既に誰かの思想に影響を受けている。

 そんな自分が思うに、今回の様な問題を生んでいるのは、作家の実力が足りないとか、モラルが欠如しているとか、それだけの事ではなくて、ライトノベル業界自体が『ライトノベル好きがライトノベル作家を目指す』様なサイクルに入っている事にその原因があるのではないか。そうすると当然、その作家が影響を受けた作品も同じジャンルの中で流通している訳で、隣に並んでいると嫌でも似ている部分が目に付く。
 特にラブコメの様なジャンルは、仮に有り物のキャラクター設定を継ぎ接ぎして作ったキャラクターであっても作家が『これは私のオリジナルです』と言えば通用するのではないかと思える部分もあるし、似ているキャラクターを探し始めたらきりがないというのが正直な所だ。ストーリーにも同様の事が言える。まあ細かい設定で味付けを変える事はいくらでも出来るだろうけれど。

 上記の事は今更自分が書くまでもない事なのだけれど、これらを踏まえた上でなお読者にオリジナリティを感じさせる事が出来る作家、作品だけが最終的には残って行くのだろう。はっきり言えば、原作付きのアニメやドラマ、映画であっても、最終的に監督がそれを『自分の作品』に仕立て上げる事が可能な様に、何かから影響を受ける事は不可避であったとしても、その上で作品にオリジナリティを吹き込む事は可能な筈だ。パクリが叩かれるのは、その作品を自分のものにする為の努力を怠っているからで、その点は安易な盗用をしてしまった作者自身が痛感していると思う。ストーリーや設定はオリジナルだったとしても、一番大事な文章表現それ自体の部分で盗用をしてしまったら、それはもう自分の作品とは呼べないものになってしまう訳だから。
  
 何にせよ、似た様な問題が今後起こらない事を願う。

テーマ : 雑記
ジャンル : 小説・文学

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Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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