おかえりなさい

 もちろん、『はやぶさ』に。
 遠く宇宙の彼方から、再び地球に帰って来た光に。

 壮大な宇宙の広がりとか、それを目指す人々の力とか、夜空に瞬く星の光とか、それを見上げる人々の願いとか、そんな尊いものがこの世にまだ存在するのだという当たり前の事を、『はやぶさ』のおかげで少しだけ思い出せた気がする。でも、そんな遥か彼方に輝く光から遠く離れた場所には、この自分のどうしようもない日常もまた同時に存在していて、自分にはその事が上手く飲み込めない。

 同じ地球の上で、『はやぶさ』が最後に描いたあんなに綺麗な光と、自分が立っているこの場所が一つの空で繋がっているのだという事。それは事実ではあるのだろうけれど、やはり自分には夢の様だ。だから何だと言われれば返す言葉も無いけれど。

 何だろう。何か書きたいとは思うのだけれど、何度書き直しても上手く書けない事がある。今もそうだ。自分の言葉では、今の自分の気持ちを正確に語る事は出来ない。それは割り切れないという事なのかもしれないし、そもそも自分には、自分の心がよくわかっていないのかもしれない。単純に文才が無いという事なのかもしれない。まあ何にせよ、今までの自分の人生で、本当に伝えたい何かは誰かに伝わった試しなんてない。
 それは多分、真空の宇宙で叫んでもその声が誰にも届かないという事と同じで、もう根本的な何かが断絶しているのだろうと思う事がある。その事自体は仕方がない事なのかもしれない。『お前だけじゃない、皆そうなんだ。だからいい加減諦めろ』と言われれば、諦めだってするさと思う。仕方がない事だ。どうしようもない事実だ。

 それでも今、自分がここでこんな事をしているのは心底諦めが悪いからなのか、頭が悪いからなのか。それとも生まれついての性分なのか。

 宇宙の様に壮大な物語の片隅に、傍観者としての自分の物語がある。人の心を打つ輝きから遠く離れた場所に、自分の立っているこの場所はある。そんな事実を飲み込んで、それでもまた明日は来る。そして、そんな毎日の中で小さな事に一喜一憂しながら、凡人としての自分はこれからもこの場所にいる。 

テーマ : 雑記
ジャンル : 日記

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黒犬

Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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