シェアードワールドノベルズの可能性・舞城王太郎『魔界探偵 冥王星O デッドドールのダブルD』

 謎の覆面作家、越前魔太郎の著作としてシリーズ化された『魔界探偵 冥王星O』のシリーズも、どうやら本作で第一部完という事らしい。その中で唯一、原作・越前魔太郎、著・舞城王太郎として出版されたのが、この『デッドドールのダブルD』だ。

 その他の作品に関しては誰が書いていたのか公式な発表は無いものの、本作の帯には秋田禎信、入間人間、乙一、新城カズマ等の名前が挙がっているし、講談社ノベルスのサイトでは更に折口良乃、相生生音の名前が挙げられている。誰がどの作品を書いたのかはその内に種明かしがあるのかもしれないが、今のところ発表されている作家がどの作品を執筆したのか推理してみるのも一興かもしれない。ちなみに、自分は予想はしないでおこうと思う。絶対に外すだろうから。ただ、一連の作品で最も気に入ったのは『ヴァイオリンのV』だ。

 さて、これらは一見新しい試みにも思えるが、言ってみればこれも、あの古き良きシェアードワールドノベルズの系譜と言えなくもない。テーブルトークRPGにはまった過去を持つ人なら馴染み深い言葉だとは思うけれど、要するに複数の作家が一つの世界観を共有した上で作られる作品群の事を言う。自分も『妖魔夜行』とか好きでよく読んだけれど、そのシェアードワールドノベルズの面白さに覆面作家というお祭り要素を付け加えたのが越前魔太郎を作者とするこのシリーズなのだろう。

 ただ本作を読んでも分かる様に、各作品を跨いで登場する登場人物であっても、その性格設定や口調等は作品によってかなりばらつきがある。また、作品自体のカラーもホラー要素を強く感じさせるものからメタ小説に近いもの、キャラクター要素を前面に押し出したものまで幅広く、全体の統一感としては今ひとつまとまりに欠ける気もする。それを含めて楽しめるかどうかについては読者の好みが分かれる所だろう。少し読んでみて、気に入った作品を選ぶという選択肢ももちろんある。

 何にせよ、これで第一部完とすれば、いずれ第二部があるのかもしれないが、その時にはどんなサプライズが用意されるのか期待しておこうと思う。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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