浦沢直樹『BILLY BAT』

 何だか『MONSTER』以降、急激にミステリ色が強くなった感がある浦沢氏の最新作。

 今回は史実である戦後日本の重大事件『下山事件』とフィクションとを織り交ぜ、『架空戦後史』の中で壮大な陰謀劇を描いている。まだ序盤なのでこれからこの作品がどう転がって行くのかは判らないが、『MONSTER』や『PLUTO』、『20世紀少年』等で見せた、読者をぐいぐい引っ張っていく語り口は今回も健在。
 本作では『劇中劇』の構図が各所で取り入れられていて、作品の中に登場する漫画が物語の重要な鍵を握っている等、非常に興味深いシーンが多かった。

 個人的には『MASTERキートン』や『パイナップルARMY』の様な浦沢作品が好きだし、母はアニメ版の『YAWARA!』がお気に入りで欠かさず観ていた位で、自分も隣でずっと観ていたせいか、今でも『ミラクル・ガール』や『少女時代』は普通に歌える。(いや、実際はそんなに歌う機会も無いけど)なので、浦沢作品=ミステリ・謎解き的な昨今の流れはちょっと残念ではある。読んでみるとどれも面白いんだけれど、そろそろ違った作風も見てみたい。
 ・・・とは言うものの、一方で『BILLY BAT』がこれからどんな展開を見せるかというのも興味は尽きない。何だかんだで浦沢漫画が好きなのかもしれない。

 それから、本作の様に『史実とフィクションを織り交ぜた作品』というものも個人的に好物だと思う。その作品を読む事で引用された史実の方に興味が広がったりする場合もあるしね。楽しみ方の幅が広がるのはいい事だと思う。実際の事件そのものを取り扱った作品はそんなに多くないと思うけれど、時代背景を切り取って虚構を織り交ぜていく手法は押井守や大塚英志等もよく使う。押井守『獣たちの夜』『立喰師列伝』『雷轟』大塚英志『多重人格探偵サイコ(漫画原作・小説版)』等はいい例。
 大塚ももっとちゃんと各シリーズを完結させる事さえ出来れば人にお薦め出来る作家だと思うんだけれどね。『毎回作品を完結させる大塚英志』っていうのが既に形容矛盾な気はするけど。

 ・・・話が逸れた。話を『BILLY BAT』に戻すと、こういう作品は終わってみるまで評価を固めるのが難しいと思うけれど、これから面白くなって欲しいという期待も当然ある。終わった時に読んでて良かったなと思えたら最高だよね。

<関連項目>

 Wikipedia 下山事件


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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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