8500人のアニー達へ

 今日の話題はこちら。いや、本当に書くの止めようかと思ったけど一応書く。

 ITmedia News『「アイマス2」署名8500件手渡し求め、ファンが内容証明送付 「キャラ4人育成可能にして」』

 まあ自分はこのゲームをやった事は無いのだけれどね。でもこの構造はどこかで見たなーと思ったらスティーヴン・キングの『ミザリー』だった。いや、半分は冗談だけれど。

 自分はいわゆるファミコン世代で、小さい頃からゲームとは縁が切れない生活をして来た。その中では当然色々なゲームをやって来たし、続編ものも結構な数だったと思う。続編もの以外にも、好きな作品が原作でのゲーム化とかね。で、当然の事ながら一ユーザーでしかない自分はゲーム開発には関われない訳で、期待していたゲームがもし気に入らない出来だったりしたとしても、選べる選択肢としては『ソフトを買わない』位しか無かった。もちろん事前情報で判断出来ない場合はそれも出来ない訳で、買って後悔するというパターンが殆どだったと思う。

 最近はネットの普及もあって、パフォーマンスとして『気に入らないゲームソフトのディスクを叩き割ってその写真をネット上にアップする』とかいう過激な行動に出る人もいるらしいけれど、自分が一番熱心にゲームをやっていたであろう中学、高校時代はどうだったかといえば、貴重な小遣いを費やして買ったゲームを、たとえそれがどんなにクソゲーであろうとも自らの手で叩き壊すなどという事が出来る訳も無く、無理矢理面白い部分を探そうとして無駄にやり込んだり、友人に無理矢理貸してプレイさせ、一人でも多くの人間と悔しさを共有する(という名目で犠牲者を増やす)等の不毛極まりない活動に精を出していたものだ。ええ、クリアしましたよスーファミで出てた『3×3EYES』のRPGも。しかも発売日に定価買いして。後に大学卒業した後で、バイト仲間にその話したら「あれクリアした人がいたんだ……」ってドン引きされたけど。いや、あれはまだゲームとしてクリア出来るレベルだから。

 閑話休題

 で、今回の件。何だかもう、これはゲームの仕様がどうとかいう問題じゃないんだなというのが自分の認識。
 ゲームでも小説でも、何でもそうだと思うけれど、その商品や作品というのはクリエイターなり作者なりのものだ。まあゲームの場合は当然最終的な権利は会社が持っている訳だけれど、例えばそのゲームが気に入らなくて「自分ならこうしてやるのに」と思ったなら、昔は自分がクリエイターになるしかなかった。でも今は消費者が消費者のままでは終わらない。彼等にとっては、もうゲームはクリエイターだけのものではないからだ。

 彼等からすれば、ゲームやそこに登場するキャラクターはクリエイターと彼等の共有財産だ。だから勝手に仕様を変えたり、特定のキャラクターをメインから外したりする事は許されない。そのゲームや関連商品に金を払い、二次創作として漫画や小説を書いたり、自作のPVを動画投稿サイトにアップしたりする事でシリーズ全体を盛り上げ、育てて来たのは自分達だという自負が彼等にはある。その自意識は既に『気に入らなかったら買わなければいい』程度の行為では収まりが付かない。

 で、こんな事を書くとその筋の人に叩かれるんだろうなーと思いながら、それでも書くけれど、こうした署名活動とか、ブログやTwitterをやっているゲームクリエイターにネット上で直接注文を付けるとか、そうした行為で作品の内容を左右出来る様になったら、もう誰も辛い思いをしてクリエイターなんてやらなくなるだろうなと思う。だって、クリエイターにならなくても作品に思い通りの影響を及ぼす事が出来るなら、外から注文を付ける方が楽だし、リスクも無いから。

 言ってみれば彼等は『ミザリー』で小説家を監禁するアニーと同じなんだろう。8500人のアニーだ。『ミザリー』と違うのは、今や作者を物理的に拉致監禁しなくても、消費者は自分の声を相手に聞かせる手段を持っているという事だ。それが正しいかどうかは別として。

 『商売としてメーカーは消費者の望むものを作る義務がある』という言い分はある意味で正しいだろうと思う。ただその場合、消費者はその商品を買わない事を選択する事によって、『消費者の望まない商品を作るメーカーは商売が立ち行かなくなる』という形で自分達の意志を伝えるのが正当な手続きだろう。メーカーの製造現場に直接上がり込んで口を挟むというのは消費者が取るべき行動から大きく逸脱しているし、それが許される様になったらクリエイターなんていう職業に就こうとは誰も思わなくなるだろう。リモコン操作のロボットの様に外部からああだこうだと命令を出され、消費者に使われる様な職には。

 『何の権利があって』という表現はよく使われるけれど、『消費者』という立場で行使できる権利が拡大され過ぎる事は双方にとってマイナスだと自分は思う。まあ気持ちは分からなくもないけれどね。

テーマ : 日記・雑記
ジャンル : ゲーム

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Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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