簡単には告げられない言葉だとしても・河野裕『サクラダリセット4』

 仕事しかしていないと書く事が無くて困る。自分は物語を摂取していないと死んでいるも同然なので、ブログの更新が滞っている間は「ああ、こいつ今仕事で死んでるんだな」と思っていただいて間違いはない。まあそんな事はどうでもいいけれど。

 さて、新刊が出る度に好きだ好きだと連呼しているこのシリーズももう4冊目。1巻からの感想はこちらこちら。そしてこちらに。今回は『ザ・スニーカー』誌上に掲載された短編を収録した短篇集となっているので、そちらで先に読んだ方もいるかもしれない。自分は文庫本購入派なのでどれも今回が初読みだった。もちろん書き下ろしも収録されているし、加筆修正もかなりある様なので『ザ・スニーカー』の熱心な読者も安心。収録作品は下記の通り。

 『ビー玉世界とキャンディーレジスト』
 『ある日の春埼さん~お見舞い編~』
 『月の砂を採りに行った少年の話』
 『ある日の春埼さん~友達作り編~』
 『Strapping/Goodbye is not an easy word to say』
 『ホワイトパズル』

 どの作品も登場人物達の心情を細やかに描いていて、その繊細さが作品全体を貫いている様な気がする。多分テーマとしては、相手に素直な気持ちを伝えるという事の難しさと尊さ、という事になるのだろうけれど、既に薄汚れた30代として生きている自分にさえも人と言葉を交わすという事の本当の意味をもう一度信じたくさせてしまう様な澄んだものが本作の中にはある。

 自分もそうだけれど、現代人は割と自分の率直な気持ちというものを口に出さない様に生きる事を強いられている様な気がする。素直に、思うままに感情表現をする事が許されるのは子供の間だけで、ある程度の年齢になれば社会生活を営む上で互いに本心を隠し、譲るべき所は相手に譲り、ある程度自分を押し殺して妥協して生きて行かなければならないという様に。けれど一方では、本当に嘘偽りのない自分の気持ちを相手に伝えなければならない場面というものも人にはあって、自分達はその事に苦悩する。

 一体どんな言葉を尽くせば、相手に自分の思いを伝える事が出来るのか。

 本著に収録されている『ホワイトパズル』では、その問いに対する一つの答えが提示されている。とてもシンプルで、だからこそ難しい、一つの答えが。

 さて、最後に軽い話題でも。このシリーズは要所要所に猫が登場するので、猫好きにとっても見逃せない作品ではあるのだけれど、本著に収録されている『月の砂を採りに行った少年の話』と『ある日の春埼さん~友達作り編~』は特に猫好き必読かと。ちなみに先日誕生日を迎えたウチの妹は『猫好きなのに猫アレルギー』という難儀な体質だったり。不憫だ……。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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