『ロシアで海賊を “合法的に死傷させる” ツアーが問題に』

 痛いニュース『ロシアで海賊を “合法的に死傷させる” ツアーが問題に』

<6/30追記>
 今日現在元記事は訂正されていない様だが、最終的な結論として『上記のニュースはデマである』という事の様だ。ただ、一度書いたものを消すのも何なので、以下の本文は残しておく。以下はその点を踏まえた上で参照下さい。
 ・・・しかし本当にデマで良かったわ。

<以下、本文>
 前に、須賀川市第一中学柔道部暴行傷害事件について言及した時、『自分達が絶対に正しいんだと確信できると、人間はどんな事でも言えるし、やれる』と書いた。正にそのままの事例。

 日本では銃こそ使われなかったが、ホームレスに対して似た様な事が行われた。若者によるホームレス狩りがそれだ。その時の若者のコメントも、『ホームレスは社会に対して迷惑をかけているのだから痛め付けても良いと思った』等といった身勝手なものだった。

 確かに自分も東京在住だった頃は、駅周辺に座り込んでいるホームレスに対してあまり良い感情は持っていなかった。公園にたむろしていたり、駅構内に座り込んだりしている程度なら周囲の人間が避けて通れば良い。だが稀に彼等が切符を買って電車に乗り込む事がある。同じ様な場面に居合わせた人間なら判ると思うが、それはもう酷い状態になる。体臭等という生ぬるいものではなく、糞尿の臭いとしか言えない臭気が車内に充満するからだ。
 どんなに混み合った車内でも、ホームレスの周辺には誰も近寄らない。最低でも半径1メートルは無人になる。ホームレス本人も自分が避けられている事は理解した上で、シートの上で横になっている。彼の両隣に座ろうなどという人間がいないからだ。
 切符を買って乗っている以上、同乗している一般客はもちろん、駅員も文句を言えない。乗り合わせた人間に出来るのは自分の目的地に到着するまで耐える事だけだ。あの経験だけは耐え難いものがあった。電車に乗ってあんなに酷い思いをした経験はそう多くは無い。当然ホームレスの存在を疎ましく思ったし、正直『駅員がさっさと叩き出せよ』とも思った。だが、人気の無い場所を寝床に選んで雨風を凌いでいるホームレスに対して、わざわざその場所まで出向いて行って危害を加えようという心理は自分にとっても理解し難い。
 海賊退治ツアーにしても、自分がその場を通行する必要性があって、自衛の為にやむなく武装するというのでもなく、わざわざ海賊退治の為と称して武器を持って乗り込もうという点ではホームレス狩りの若者と大差ない精神構造だとしか言えない。

 両者に共通しているのは、『海賊(またはホームレス)の様な、社会にとって不都合な存在は暴力的な手段に訴えてでも排斥すべき』という屈折した正義感と、『何故彼等は海賊(またはホームレス)として生きるに至ったか』という背景を全く理解しようとしていない共感能力の欠如にある。海賊だろうがホームレスだろうが、そこには当然各々の事情があり、そうなった背景がある。他にまっとうに生きて行く手段を持てたなら、彼等もまた社会の中で自分の居場所を得る事が出来ていた筈だが、彼等を排斥しようとする側がその原因に目を向ける事は無い。

 結局、彼等に危害を加えようという人間は『サンドバッグ代わりにしても文句を言われない対象』を求めているだけなんじゃないだろうか。ホームレスでも海賊でもいいが、多数派に疎まれている対象、それを叩く事が容認される空気を持った対象を探している。
 イメージ的には『王様の耳はロバの耳』だ。王様の耳がロバの耳であると知っている床屋は秘密をぶちまけてしまいたくて堪らない。でもそんな事をすればどうなるか判らない。だから床屋はその秘密を吐き出しても構わない場所を求める。それと同様に、人間生きていれば暴力的な衝動に駆られる事はあるし、他人を見下して自分の自尊心を満足させたくなる事もある。普通は自分の中のそんなドロドロした感情を世間に対してオープンにする訳には行かない。だから誰にも迷惑を掛けずに虚構の中で発散させたり、自分の中でその衝動が治まるまでじっと我慢したりして社会生活を営んでいる。だが、適当な対象を叩く事でもっと直接的に鬱屈を発散させようとする人間も中にはいるという事だ。

 だから自分は何度も言う。『正義』を疑え。

 社会正義や個人の中の正義は、容易に『攻撃対象に貼り付けるレッテル』や『個人的欲求を満たす為の免罪符』に成り下がる。しかも一見自分が正しい事をしている様な気分まで与えてくれる。凄いね、麻薬でもなかなかこうは行かない。

 自分がこうして書くのは別に偉そうに説教垂れたい訳ではなく、『自分も危ないから』でしかない。自分を信用しない事。いつか自分が向こう側に転げ落ちそうになった時の為の、これは覚書だ。

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Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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