深見真『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ』

 

 仕事をしていると色々なストレスがあって、悪いとは思いつつ他人に苛立ったりもする。『こいつ、いつかブン殴ってやろうか』と思う事もしばしばある。そんな時には『他人に迷惑を掛けない真っ当なやり方』でストレスを発散する必要がある。

 バイオレンス描写が含まれるアクションやホラー映画、小説、ゲーム等は多くの場合世間から叩かれる。曰く犯罪を助長するとか、教育に悪影響を及ぼすとか。
 ただ、そういうものを全て規制してしまうと、虚構の中で暴力性を発散させようという時にその受け皿が無くなってしまい、結果現実に悪影響が出る様に思う。少なくとも自分は、大いに困る。

 というわけで深見真『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ(以下AGC)』だ。

 AGCには、『干渉粒子特性能力者』と呼ばれる『何も無い空間から銃器を生み出せる能力者』が登場する。通称『銃使い』と呼ばれる彼等は、当然銃器の所持や使用が認められていない日本ではその存在そのものが違法とされる。その為政府は彼等を取り締まる組織としてGEAと呼ばれる武装警察を擁してこれに対抗する。この二つの勢力の対立が物語の基本構造になる。
 GEAは通常の警察組織とは異なり、対象を射殺する事に何の躊躇いも無い。更に銃使いが生まれる一因としてアクション映画やミリタリー雑誌等も取り締まり対象としており、現実の日本でならどこででも手に入る様なミリタリー雑誌や映画、DVD等はAGCの世界では違法となって地下に潜っている。

 当然ストーリーの中では銃撃戦があり、格闘技による肉弾戦があり、その度に登場人物は死にまくる。おまけに同性愛やセックスに関する描写もある。堅物のPTAが読んだら卒倒するか怒りのあまり脳血管がキレるレベルだ。

 ただ、この作品を読んでストレスを発散している自分は、至って平凡な奴だ。喧嘩もしないし、煙草も吸わない。酒は週末に嗜む程度。女性関係も至ってクリア・・・というか何も無さ過ぎて親が途方に暮れる程度の逸材だ。最近の言葉を借りるなら、至って草食系。我ながら凡人の名がここまではまる奴もいないと思う。これはどういう事か。

 つまり、小説や映画、ゲームといった『虚構』が、現実の犯罪者を生み出す等という短絡的な思考は的外れなんじゃないのかという事だ。もちろん現実にそうした暴力性を持った人間はいる。そういう人間がこうした作品を好む可能性は高い。だが逆にこうした作品が凶暴な犯罪者を生み出すとするのは飛躍し過ぎだ。『北斗の拳』が一体何万部売れたと思うんだっていう話になる。同様に『多重人格探偵サイコ』が売れたから猟奇殺人犯が増えたという話も聞かないし、トマス・ハリスの一連の作品や、映画『SAW』がヒットしたからシリアルキラーが増えたという話も聞かない。

 自分は供給量さえ過剰でなければ、こうした作品がある程度市場に流通している事はむしろ健全だと思う。役人や自称知識人が認める『健全な作品』だけが流通を許される様な社会は息が詰まるし、実際遠からず破綻する筈だ。
 最近児童ポルノ関連がやたらと騒がれている様だけれど、現実に『被害者』が存在しないゲームや漫画等にまで規制の網をかけるのだとすれば、そうしたもので自分の中の欲望を発散させていた層が受け皿を奪われて逆に過激な行為に走るのではないかと懸念している。規制してしまってから『やっぱり逆効果でした』では済まされないのだから。

 人様に見せられないドロドロはきっちり虚構で消費して、また健全に現実を生きる。それがよく訓練された凡人であり、自分のライフスタイルだと思う。
 レッツ・プレイ・アフリカン・ゲーム。ただし、虚構と想像の中で。

 

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Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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