目を逸らさずに生きる彼等に・河野裕『サクラダリセット6』

 

 やっと読む時間が取れた。読み終わった感想は「純粋さが胸に痛い」。突き刺さる。まあ自分が薄汚れただけともいうかもしれないけれど。

 大人になってしまった自分からすれば、この物語の登場人物達の様に純粋に、真摯に、目を逸らさずに社会や世界と、そして自分自身と向き合って生きる事は辛い。誤魔化しや都合の良い嘘を信じて生きて行く方が簡単だ。少なくとも表面上は諦めて全部受け入れて、でも本当はどこか割り切れない部分を抱えながら、ままならないものと折り合いを付けて生きて行く。往々にして大人がそんな生き方を選んでしまうのは、そうしないと「生き苦しい」からだ。辛いからだ。

 でも、この物語の登場人物達はそんな事をしない。

 その純粋さは、大人になってしまった自分が直視するには少々眩し過ぎる。もっと単純に言えば「好きだ」という事だ。たとえ自分が彼等の様には生きられないのだとしても。

 ……とまあ、ちょっと感傷的な事を書いてみたけれど、もうすぐ終わってしまう事が惜しいくらい自分はこの小説が好きだし、登場人物達の事が好きなのだと思う。春埼はもちろんだけれど、智樹は同性目線で見てもちょっと格好良過ぎる程いい奴だし、相麻が強くあろうとする姿は胸に迫るものがある。そしてケイは智樹が言う様に、きっと“インテリジェンスの使い方を間違ってる”のだろう。でも、その不器用さを含めて好意を抱いてくれる人が、彼のすぐ隣にいる。

 ケイが目指す“一番、幸せな結末”に辿り着けるのかどうか。その答えが出るのはもうすぐだ。読者としては待ち遠しくもあり、逆に惜しい様でもある。でもそれは読者側のわがままというものかもしれない。願わくば彼らが幸せになれますように。薄汚れた大人としては柄にも無く、心からそう願っている。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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