ウンチク+わんわん=押井守・西尾鉄也『わんわん明治維新』

 

 そもそも原作者の押井守氏とは――という話を語り始めると長くなるので割愛。

 押井守原作、そして犬ものという時点でこの作品が真っ当な歴史漫画である筈もなく、特に原作はウンチク成分が一般人の致死量を超えて含有されていたであろう事が容易に想像できる訳だが、それを西尾鉄也氏が漫画として描く事によって程良く薄まった印象がある。これで押井守アレルギーの方にも安心して読んで頂ける作品に……ってすいません、流石にそれは嘘です。
 個人的には西尾氏の絵が好きなので、押井氏のファンだけではなくもっと色々な人に読んで欲しいとは思うのだけれど。

 さて、そんな読む人間を選ぶ本作だが、『明治維新』はいいとして、『わんわん』って何よ、と思う人が多いだろうからちょっと説明する。その昔『名探偵ホームズ』という、登場人物達を全て犬の擬人化キャラで描いたアニメ作品があったけれど、要するに本作の『わんわん』とはあれの事だ。明治維新を一つのテーマとして、様々な歴史上の有名人達を犬キャラにし、漫画でウンチクを語ってしまおうという訳だ。

 しかしなぜ犬なのか。猫では駄目なのか。そう、駄目なのである。何故なら押井守といえば犬であり、犬といえば押井守なのだという大前提がある以上、本作は何が何でも『わんわん明治維新』でなくてはならず、間違っても『にゃんにゃん明治維新』であってはならないのだ。逆に言えば登場人物が犬キャラである必要はその事をおいて他には無い。
 それにしても、西尾氏が「いつかやりたい企画」として温めていた『わんわんもの』を、こういう形でうまいこと利用してしまうのが押井氏の手腕なのだろうが、他者を巻き込んで利用しつつ最終的に自分の目的を達成するというそのやり口は完全に悪党のそれである。

 『愛嬌だけで事態を押し切る』
 『オリジナリティは必要なし パクリパクられは世の常』
 『最後にやってきておいしいとこどり』

 という西尾氏による人物評もあながち間違ってはいないかもしれない。

 歴史ウンチクに関しては、本当に歴史が好きで詳しい人には物足りないかもしれない。今回は漫画という事もあり、小説等と違ってそんなにあれこれ盛り込むとか、圧倒的な文章量で押し切るという事が出来ないからこれは仕方のない所。そもそも何を語るにしても押井氏の感覚は偏っているので合わない人は本当に合わない。本作にしても「押井守がどれだけ坂本龍馬(というか龍馬ファン)が嫌いかよくわかる」様な部分もあり、正直坂本龍馬が好きな人があえて本作を読む必要はない気がする。自分の様に「良い部分も駄目な部分もひっくるめて『押井守』というコンテンツを楽しみたい」という様な奇特な読者でもなければ無理に手を出す事もない。

 さて、シリーズ化やらアニメ化の野望はどこまで実現するのか微妙な所ではあるけれど、西尾氏の絵が好きな自分としてはまた何かの機会に西尾氏の漫画が読んでみたい気もする。その為には本作が売れないとまずいのだろうけれど……どうかなあ。(遠い目をしつつ)

 

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

黒犬

Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
Twitter
リンク
RSSリンクの表示
Amazon