地味か、渋みか 神山健治・春日康徳『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX SECTION-9』

 

 攻殻機動隊が好きである。どの位好きかというと、昔ELECOMが出していた士郎正宗デザインマウスをいまだにメインのPCに繋いで使い続けている程度には好きだ。いや、もう塗装が剥げてボロボロになりつつあるのだけれど、妙に手に馴染んでしまって他のマウスが使えない。まさか『ネットは広大だわ』というお約束をやる為に買った様なマウスをここまで使い続ける事になるとは思っていなかった。

 ……とまあ、そんな冗談はさておき、本作は草薙素子不在の公安9課を描いた短編集だ。作中の時間軸は『2nd GIG』と『S.S.S.』の間という事で、公安9課が少数精鋭の特殊部隊から、多数の人員を抱える組織へと変化していく過程が描かれる。
 本作では新たに9課に配属される事となった新人隊員の視点で描かれる話が多く、それはそれで新たな9課の物語として面白いとも言えるのだが、そこに問題点があるとするならば、一言で言って『地味』であるという事に尽きる。攻殻機動隊を原作からアニメ作品まで網羅している濃い目のファンが副読本として読む分にはいいが、まさかいないだろうとは思うがここから攻殻機動隊の世界に入ろうとか、攻殻機動隊をよく知らない人が最初に手を出す本としては全くお勧め出来ない。

 自分はこの手のアニメシリーズの中に必ず1話か2話は入って来る地味なエピソードというのが結構好きだったりもするので、これはこれで結構楽しめた。中でもタチコマではなく、ウチコマがメインで登場する『戦場のThink』や、プロトが主役を務める『日報』はアニメの脚本としては絶対に通らなそうなレベルの地味さでそれが逆に面白かった訳だが、それだけに読者を選ぶタイプの短編集である事は間違いなさそうだ。この作風を単に『地味で派手さに欠ける』と捉えるか、それとも『渋くて味がある』と捉えるか。

 個人的な感想から言えば、本作は短編集というよりも、アニメ作品の為のプロット集というか、ネタ集的な印象を受けた。もし攻殻機動隊の次期アニメシリーズが企画されたとすれば、その中にはこんなエピソードも入って来るかもしれないな、と思える様な作品が並んでいて、それはそれで想像力を掻き立てられるものがあるのだが、それだけに、贅沢な事を言う様だが「やっぱり攻殻は映像で観たい」という気分にさせられるものがある。またそういう機会があればいいのだけれど。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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