村上龍『あの金で何が買えたか(文庫版)』

 麻生総理と言えば、最近話題なのが『アニメの殿堂』問題。何せ事業費が117億という事で、『無駄だ!』『いや必要だ!』と議論も白熱している。個人的には『何もそんなものまで国でやらんでも』と思ってしまうが、『「アニメの殿堂」ほど正しい予算の使い方はない』という記事もあるくらいで、世の中には色々な意見があるものだと思う。

<関連項目>

 岸博幸の「メディア業界」改造計画 『「アニメの殿堂」ほど正しい予算の使い方はない』

 YOMIURI ONLINE『「アニメの殿堂」は無駄、母子加算復活を…鳩山代表』

 で、結局要不要どっちなのよ、という話だが、最終的には政府の『懐具合』を考えなければならないだろう。金がいくらでもあるのならそりゃ政府が公共事業としてこうしたものを作るのも構わないのだろうが、現実には借金まみれな訳だしね。これから税収が劇的に増えるなんて事もないし。

 アニメの殿堂についても、『それがどうしても、例え借金を背負おうが他でひもじい思いをしようが今絶対に必要なんだ』という程の覚悟をもって事に臨もうというのなら話は別だが、『とりあえず作っとくか』程度の考えならやらない方がいいのではないかと思う。逆に作るなら、『これで世界中のオタクを呼び込んで一大観光施設として大成功させてやるぜ』という位の気合と、それに向けた具体的な戦略が必要だ。

 いずれにせよ作るとなれば税金を使うわけだから、『その税金を本当にそこに投入してもいいのか』という事について考えてからにしてもらいたい。具体的には、この本を100回は熟読した上でやれと言いたい。

 というわけで、村上龍『あの金で何が買えたか』だ。
 この文庫版は1999年に刊行された単行本を文庫化するにあたって大幅に加筆訂正したもので、2001年に刊行された。確かに今読むには情報が古い感じがするのは否めない。冒頭の対談は竹中平蔵氏、巻末の対談は植草一秀氏と、現在の二人を思うと時の流れは早いものだと思う。

 だが、その内容、特に着眼点は本当に優れている。
 例えば『6兆4990億円』という金額を聞いても具体的なイメージは湧かない。これは住専(旧住宅金融専門会社)の一次損失額(96年2月時点)だ。この本では、この金があったら何が買えたか(出来たか)という点に着目し、現実味が無い数字に血肉を与えようとする。この場合、次の様な試算が後に続く。

 『国際宇宙ステーション計画半額負担』 2兆4000億円
 『全ての地雷除去』              3兆9600億円
 『おつり』                      1390億円

 おつりの単位が億というのも凄いが、例えば住専が出した一次損失の半分程がもしあれば、世界中の地雷を除去できる。要はそれだけ意義がある活動に使う事も出来ただけの金がバブル崩壊で消えてしまったという事だ。
 他にも公的資金で数千億の金額が投入された等の具体的な事例について、その金があればもっと違う事が出来たり、買えたりしたんだ、という具体例で答えている。その試算については異論反論あると思うが、着眼点は面白く、イメージとして判り易い。ちなみにマイケル・ジャクソン氏が亡くなって注目された『ビートルズの全楽曲出版権』は、この本によれば81億6000万円だ。

 個人的には、この本を年刊として、前年の公共事業費や財政出動の中から『これは明らかに無駄だろ』と思われるものを毎年取り上げるシリーズものにして欲しい。そしてついでに付録として各項目別に関係省庁のクレーム受付窓口の電話番号を記載しておいてもらいたい。読者は本を読んで税金の使い道に怒りを感じたら、その場で関係省庁に電話してクレームを付けられるわけだ。もちろんメールアドレスでも可。
 それでなければせめて『サブプライム問題編』として、2008~2009年版を刊行して欲しい。
 
 『よ~く考えよ~ お金は大事だよ~』というCMソングがあったが、その事を本当に理解しているのか?という役人や金融関係者があまりにも多い。国債をバンバン発行したり、公的資金注入を要望するのはいいが、連中は本当に後先考えているのか?本作を課題図書として100回は熟読しろと言いたい。

 

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