怪物にも萌えが要求される時代か・池端亮『あるゾンビ少女の災難』

 

 たまには気楽に更新してみる。またゾンビものだけど。
 今までにも押井守氏の『ゾンビ日記』とか、ちょっと変わり種だけれどマックス・ブルックス氏の『WORLD WAR Z』とか、何回かゾンビものについて取り上げているけれど、自分は結構この手の『B級映画』的なネタが好きだ。自分は映画におけるB級とかのランク付けはジャンル分けの様なものだと思っていて、決して低予算のB級映画が他の映画と比べて一段落ちるという意味で言っている訳ではないのだけれど、何故かB級映画の世界では定期的にゾンビものが出て来るので結構な頻度で観ている気がする。

 さて、本作『あるゾンビ少女の災難』もまた、タイトルにゾンビとある通りゾンビものには違いないのだけれど、これはどちらかと言うと『13日の金曜日』とか『エルム街の悪夢』等のスプラッター映画に近い。そしてこの手の作品にはストーリー展開に一種の様式美が存在するので、何も考えなくても楽しめるというお手軽さがいい。大抵は以下の様なパターンだろう。

1 発端
 大抵は映画の主人公達がいらん事をやらかしたせいで悪いものを呼び寄せてしまう。
 例えばわざわざいわくつきの場所に出掛けて行くとか、政府や科学者が無茶な実験をするとか、「止せばいいのに」という事をわざわざやらかした結果、怪物に襲われる。話は逸れるけれど、名探偵コナンとか金田一少年とか、お前らもう迂闊に外出するなよ、と思わなくもない。出掛けた先での殺人事件発生率が異常だから。正に歩く死亡フラグ。(ただし他者限定)

2 増える犠牲者
 大抵は主人公グループの中でうっかり死亡フラグを立てた奴から先に一人ずつ犠牲となる。「様子を見て来る」と言って単独行動したり、特に物語の冒頭でグループから離れていちゃつくカップル等はほぼ間違い無くその直後に死ぬ。

3 決着
 主人公グループの中で最後まで生き残った誰かが怪物に一矢報いてこれを退ける展開か、さもなければ全員殺されて「そして誰もいなくなった」となるか二択。

 ……とまあこんな風に、よく言えば様式美、悪く言えばワンパターンなのがこの手の作品の特徴だ。この、休日にアルコール片手にだらだら観たって構わない様な気楽さが自分は気に入っているのだけれど、本作がちょっと変化球なのは、人間を襲う怪物の側を主人公にした事と、そこにライトノベル的萌え要素を付加した所だろう。
 主人公のゾンビ少女、ユーフロジーヌは美少女かつ天然ボケ。彼女の味方であるメイドのアルマは主であるユーフロジーヌに辛辣な口を利く等、こちらもライトノベル的萌え要素としてはある一定のパターンに当てはまる。このストーリーとキャラクター設定の「あるある感」が正にB級映画的安定感を生み出している。

 しかしいくら萌え要素を付加された美少女とはいえ、「ついうっかり」みたいなノリで殺される人間の方からすればたまったものではないのだけれど、そこは人間の側にも彼女と対抗し得るだけの強敵を配する事で上手くバランスを取っている。人を襲う動機も「人間に奪われた『ある物』を取り返さなければならないから」とする事で、ユーフロジーヌが単なる殺人鬼や怪物になってしまわない様に配慮されている。読者の感情移入のし易さという意味でもここは重要だろう。普通の感性ではジェイソンやフレディに感情移入して応援する事は難しいから。まあ『フレディVSジェイソン』なんていう映画が成立する位なので「いいぞジェイソン、もっとやれ」的な楽しみ方も出来ると言えば出来る訳だけれど。

 最後に蛇足。自分が読んだのは以前に刊行されていた単行本の方なのだけれど、何でもこの作品アニメ化するそうで、角川スニーカー文庫から、よりライトノベルチックになった新装版が出ていたらしい。確かにイラストが付いて書店のライトノベルコーナーに並んでいるのを想像すると違和感がないのだけれど、個人的には単行本の「血の付いた煉瓦」みたいな装丁の方がB級映画的で好きだなと思う。

   

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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