この表紙を信じてはいけない・入間人間『たったひとつの、ねがい。』

 

 ……本作は、平成24年『最も表紙買いしてはいけないライトノベル』部門にノミネートされました。もちろん、自分の脳内で。というか、他に本作に匹敵する作品も見当たらないのでこのまま『最も表紙買いしてはいけないライトノベル大賞』を受賞する予定です。おめでとうございます。

 というわけで、以下、いつも通りの口調で書き進めると重くなる一方なのでちょっと砕けた文章にしてみる。

 ……本当に油断していた。作者が入間人間氏である時点で自分はもっと警戒すべきだったのだ。それはもう全く予期していなかった方向から暴走車両が突っ込んで来て跳ね飛ばされたに等しい位のダメージを受けた。「そっちからかよ!」などとツッコミを入れる余裕すら無く、跳ね飛ばされた勢いそのままに頭から地面に叩き付けられたレベル。「即死というのは即座に死ぬ事を言う」って昔誰かが言ってたっけ。うん、まさにそれ。この表紙でこのストーリーは無いわ。うん、無い無い。何度考えても。

 入間人間氏が一筋縄では行かない作家である事は『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』シリーズを読んだ事の無い自分の様な読者であっても理解していた筈なのだけれど。同じ入間人間作品でも、『六百六十円の事情』とか『僕の小規模な奇跡』とか、ああいう作風を期待していると間違いなく足をすくわれる。あちらが『白』入間ならこちらは間違いなく『黒』入間といったところ。他にも言いたい事は色々とあるけれど、これ以上は自分の口からはちょっと。まあここまで警告しておけば、何も知らずに表紙買いして事故に遭う可能性は低いだろうから、それでも手を出すぜ、という方はご自由に。ネタバレの感想は下の方に置いておきます。






 ……とまあ、ここを読んでいるという事は、本作について『知っていて手を出した人』か、自分の様に不幸にも『表紙買い事故に遭遇した人』のどちらかだろうと思うのでもうぶっちゃけてしまうけれど……。

 一体、誰がこの表紙からカニバリズムを連想するだろうか。

 不意打ちにも程があるなと。いや、自分の様な雑食系本読みならばどの方向から球が飛んできたとしてもある程度対応は出来るけれど、耐性が無い人が偶然手にとってしまったらトラウマ植え付けられるレベルだと思う。ゴア描写自体は浅井ラボ氏の作品などを読み慣れているとそこまで酷いとは感じないけれど、こう不意打ち気味に来られるとちょっと驚くというか何というか。

 『復讐劇』というのがひとつのテーマなのだろうけれど、例えば「大切な人を殺された復讐として相手を殺してやる」というストーリーはわかり易い反面、「それをやったらお前も人殺しの仲間入りなんだけど」という矛盾も孕んでいる。その部分での主人公の苦悩や葛藤を作中でどう処理するか、復讐者に感情移入する読者をいかに納得させるかは作者毎に違う訳だけれど、本作の様に復讐する方も『殺る気満々』『殺戮上等』で来られると、結局どちらも同じ『狂気』の側に立っている様で恐ろしい。まあ本作の場合はむしろそれが自然なのだけれど。

 というわけで、あえて人間の狂気を覗き込みたい、という人にこそお勧めしたい本作。決して表紙に騙されてはいけない。色々な意味で。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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