ゲーム小説の正統進化系・愛染猫太郎『塔京ソウルウィザーズ』

 

 これは良い中二。
 まあ冗談はさておき、久し振りに中二成分が迸る様なライトノベルらしいライトノベルを読んだ感じがする。もちろん、最近そういう作品が無いという事ではなくて、自分が意図的にそうした作品を避けている部分もあるのだけれど。何せ自分ももう三十路超えてますから。

 さて、中二的作品の中二たる所以とは、その世界観や引用する名詞の選択、キャラクターの設定やストーリー構成、登場人物達のセリフ回し等に高濃度の中二成分が含有されているという点にある。では何をもって中二的であると定義するのかというと、こればかりは読者の主観によるものが大きいので「これだ」と言い切ってしまう事は難しい。
 自分が本作を中二的だと感じるのにはいくつか理由があるのだけれど、その中でも一番の理由は本作の世界観が「徹底してライトであり、ポップである」という所にある。

 本作に登場する『ソウル・ウィザード』と呼ばれる魔術師達は、自らの魂=ソウルを改造する事で能力を高めるとともに、死者のソウルを摂取し、これを消費する事で魔法を行使する。ソウルを摂取するとは、文字通り食べる事であり、ソウルは食材として店で売られてもいる。
 この設定について少し考えてみる。ソウルという言い方をしているから軽く感じるが、ソウルを『魂』と言い換えるとなかなか重い。自らの魂を改造する。死者の魂を食べる。そうした本来忌避されるべき行為が、本作では特に何の疑問も無く行われている。まるでオンラインゲームのアバターをいじる感覚で自分の魂に手を加え、ゲームで倒した敵が落としたアイテムを拾う感覚で相手の魂を手に入れる。もっと重く書こうとすればいくらでも重く描写できる世界観だが、本作は徹底してライトかつポップに展開する。だから『魂=ソウルを軸にする』という世界観に反して、本作には少しも影がない。この無邪気さが中二的だなと。

 他にも「ウィザードがクエストをこなす事によって等級を上げて行く」だとか、「等級によって社会的地位が決まる」だとか、設定の端々にゲーム的な部分がある。要するにゲームと同じでレベルが高い奴は強いし偉い、という事なのだろうが、このゲーム的な味付けは電撃文庫から刊行される作品としてはある意味正しい。電撃小説大賞もかつては電撃ゲーム小説大賞という名前だったのだし。そういう意味でも本作はゲーム小説の正統進化系であり、『正しい中二』を志向した作品に仕上がっているわけだ。

 個人的には、人間の魂という重いテーマを扱って世界を構築するのなら、古橋秀之氏の『ブラックロッド』に登場する<ケイオス・ヘキサ>なみに霊気が漂って来そうな妖しい世界観が好みだったりするのだけれど、本作の様に徹底してライトに構築された世界観もこれはこれで面白い。徹底してライトかつポップに。そしてキャッチーに。そりゃ犬耳美少女やら猫耳メイドも出るわなっていう。これが今風のライトノベルっていう事なんだろう。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

黒犬

Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
Twitter
リンク
RSSリンクの表示
Amazon