ユーモアSFの面白さ ジョン・スコルジー『アンドロイドの夢の羊』

 

 ここのところ忙しくてブログを更新する気力も無い感じだった。全く本を読んでいなかったという訳でもないのだけれど。というわけで、今回はまあリハビリ的に。

 さて、本作の題名を見て「おや?」と思う人は多いはず。本作『アンドロイドの夢の羊』(原題・The Android's Dream)の題名はフィリップ・K・ディック氏の名作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(原題・Do Androids Dream of Electric Sheep?)から着想を得ている。では本作もまた『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の様な物語が展開されるのかというとさにあらず。本作にはユーモア精神が溢れている。ブラックユーモアも含めて。

 地球人が宇宙に進出し、様々なエイリアン種族で構成される大銀河連邦に加盟する様になった未来。当然そこには異星人との外交問題が発生する訳だが、地球人はニドゥ族という厄介な交渉相手を抱えていた。主に軍事力の差から、貿易交渉等で圧力をかけられる事が多い地球には反ニドゥの機運が高まりつつあったが、この反ニドゥ勢力の暗躍が思わぬ形で両者の全面戦争に発展しかねない事態を引き起こしてしまう。全面戦争となれば人類に勝ち目はないが、この事態を解決する為にニドゥ族が要求してきた事もまた難題だった。それはニドゥ族にとって特別な意味を持つ、ある『羊』を調達する事で……。

 もう、この「宇宙ではまだ地球人の発言力が弱く、地位も低い」という設定からして面白い。その軍事力を背景として、高圧的な異星人から無理難題をふっかけられ、決断を迫られる地球政府の姿はどこか今の日本にも通じている気がして親近感を覚えるほど。そしてこの劣勢からどうやって逆転して行くか、という部分のストーリー展開が、思わず「え~、それってアリなの?」と言いたくなる様なもので、これもまた結構笑える。

 他にも『ある宗教団体の身も蓋もない裏側』等、いい意味でブラックユーモア込みのB級的なノリが楽しい本作。特に冒頭、今回の事件の発端となる貿易交渉の席で反ニドゥ勢力が仕掛ける挑発行為は、多分ユーモアSF史上に残る名シーンとして後世に語り継がれる事になるだろう。いや、こんなもん語り継いでいいのかという気もするのだけれど、これはもう笑ってしまった自分の負け。まあ相手が異星人だからこそ通用するやり方なのだろうけれど、傍から見て本当にしょうもない事がこれだけ大真面目に展開されるというのはもう笑うしかない。それがどんなものかは本作を読んで頂くとして、題名からして真面目で硬い作品なのかと身構えていた所に、ストレートに笑いのネタを叩き込まれたのでツボに入ってしまった。あーお腹痛い。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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