そして少女は宇宙を目指す・野尻抱介『女子高生、リフトオフ! (ロケットガール1)』

 

 明けましておめでとうございます。こんな辺鄙なブログに足を運んで頂ける方がどの程度いるのか定かではありませんが、本年も宜しくお願い致します。自分もまた無理せずぼちぼちやって行こうかと思っております。

 さて、ここからはいつも通りで。新年最初の感想書きは明るい話がいいなと思っていたら、昨年買って積んでいた本がまだある事に気付いた。所謂『積読』って昔は全くやっていなかった筈なのだけれど、気付いたら年を跨いでしまった未読本が何冊かあって反省しきり。Kindleの中に入っている未読データも含めると追い付くのが大変だ。福井晴敏氏の『人類資金』とかいつ読めるかな……とまあそれは置いといて。今回はその中から野尻抱介氏の『女子高生、リフトオフ!』を。

 前にも書いた気がするのだけれど、自分は読書傾向が偏っているので、仲間内からも「これだけライトノベル読んでて、何でこのメジャー作品読んでないんだよ」と指摘される事が多い。加えて昨今はライトノベルレーベルも乱立していて、とても全てに目を通す事は不可能だし「お気に入りの作家だけでも」と思って作家名で追い掛けるにしてもその全てには手が回らない。まして新人作家の作品など言わずもがな、という状況だ。だから本作の様に、過去にライトノベルとして出版されていた作品の復刊という形でようやくその存在を知る、なんていう事が結構ある。(本作は富士見ファンタジア文庫から出版されていた『ロケットガール』シリーズの復刊との事)
 ちなみに自分がこの手の復刊で知った作品というと、最近では山下卓氏の『BLOODLINK』シリーズがある。後は存在は知っていたけれど実際に読み始めたのはガガガ文庫移籍後になった浅井ラボ氏の『されど罪人は竜と踊る』シリーズとか。

 自分の友人で、毎月自分以上にライトノベルをもりもり買っている人物がいるが、(そしてその何割かは未読のまま積まれている様だが)彼に言わせるとライトノベルは発売日近くに買わないと、その後書店で見掛けなくなってしまったりするので手に入れるのが大変なのだそうだ。最終的にはネット通販という手もあるが、言われてみれば確かに書店の棚から姿を消すのは一般文芸よりも早い気もする。アニメ化や映画化等で再度脚光を浴びる様になれば新装版が出たり重版がかかる事もあるのだろうけれど。何にせよ、本作の様に復刊され、別レーベルから出版される事があると、それまでの読者層とは違う読者の目にも作品が触れる事になる。それによってまた新たな読者を獲得する事ができれば、作品にとっても作者にとってもプラスになるのかもしれない。

 話を作品自体に戻す。本作は題名の通り、女子高生がロケットに乗って宇宙を目指す事になる話だ。普通に考えて、女子高生を宇宙飛行士にするには彼女の側の動機付けだけではなく、宇宙飛行士を探している側にも女子高生を宇宙飛行士にしなければならない相応の理由が必要になる。本作はその部分が非常にバランスが取れていて、ライトノベル的なハチャメチャさと爽快感がありながら、SF的にも合理性があって面白い。

 主にロボットアニメ等で、第1話で主人公をロボットに乗せる為にどんな手を使うか、という事に製作者は頭を悩ませる。多分一番有名なのは『機動戦士ガンダム』のアムロだろう。後に『新世紀エヴァンゲリオン』で碇シンジをエヴァに乗せる時に、ガンダムの1話を研究したという話を読んだ事があるけれど、あれは「エヴァに乗らなければこの重傷の少女をお前の代わりに乗せて出撃させるぞ」と、1話目から主人公が実の父親に脅迫されるという稀有な作品だった。まああれはあれで面白いのだけれど、本作の様に主人公である女子高生のゆかりが宇宙飛行士になろうとする理由と、彼女を何が何でも宇宙飛行士に担ぎ上げようとするロケット開発チームの事情が噛み合っているとそれもまた面白い。何よりゆかりが明るくて前向きなので、読んでいて気分が良い。

 本著は約20年前の作品だというが、その古さをあまり感じさせない作品になっていると思う。少なくともまだ有人宇宙飛行は一般的ではないし、女子高生も宇宙には到達していない。現実が本作を完全に追い抜くには、まだ時間が必要な様だ。自分も死ぬ前には一度で良いから宇宙に行ってみたいものだと思っているのだけれど。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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