妖怪だってスマホを使いこなす時代です・汀こるもの『ただし少女はレベル99』

 

 この方の本を読むのは本作が初めて。いや、作家名もそうだけれど、作品のタイトルに特徴的なものが多くて(何故か『溺れる犬は棒で叩け』というタイトルが妙に記憶に残っている)以前から知っていたのだけれど、個人的にミステリというジャンルが若干苦手なので。

 本作は帯の文と、表紙の折り返しに書かれた著者コメントを読んで買ってみようかと思った。帯の文はこんな感じ。

 “魔法が使えるからといって万能なわけじゃない。”
 “天狗と狐と白蛇を従える純和風美少女・市子。魔法レベルは99、やんごとなき中学生”

 そして著者コメントはこんな感じ。

 “綾波系無感情美少女が超絶美形妖怪ハーレムにチヤホヤチヤホヤチヤホヤされる話を書きたかったはずでした。”

 「うん、これならミステリが苦手な自分も行けそうな気がする。軽く、さくっとキャラクターものとして読める気がするぞ、妖怪ネタとか好きだし」と思った次第。その思惑はまあ、概ね当たり。ただ著者コメントに「書きたかったはずでした。」とある様に、実際の物語はコメント通りの内容とは行かない。読者としてはむしろ最初から、この著者コメントの内容からどれだけ外して来るのか、という方をこそ期待して買ったので問題はないけれど。それにしても『超絶美形妖怪ハーレム』って凄い字面だな。

 のっけから『綾波系無感情美少女』なんていう単語が飛び出して来ているけれど、本編の方も結構ネタとして様々な作品名や作家名が頻出する。サブカル方面に明るい読者にとっては内容が分かり易い反面、特に後半『Steins;Gate』とか『エンドレスエイト』とか『まどかマギカ』とか『アニメ映画版時かけ』とかいう単語がバンバン出て来る訳だけれど、これって元ネタ知らない読者はどうすれば。まあ前後の文脈から大体どんな内容なのか分かるだろうから問題ないと言えば問題ないかもしれないけれど。そして個人的に最もツボにはまったのは以下の台詞。

 “儂は己がしたいことしかせん! 儂が六道輪廻を外れてここにおるのは世を呪うためでも世界平和を守るためでもない、国会図書館で円城塔とバチガルピを読みながら安部公房と埴谷雄高と伊藤計劃が輪廻転生して新作を著すのを待つためじゃ! 宮仕えなんぞしとうはなかったわ!”

 ……あー、何かこの人とは仲良くなれそうな予感がそこはかとなく。まあ人じゃなくて妖怪だけど。作家の趣味というよりも本読みとしての欲望の方で意気投合出来そう。自分だって霞を食って生きられるなら国会図書館に入り浸って一生好きな本を読んで暮らすわ。

 というわけで、本作はこんな事をのたまう妖怪に宮(みや)と呼ばれ尊ばれる少女、出屋敷市子の周辺で起こる騒動を軸に物語が展開する。登場人物達は上記の様に、人間も妖怪も結構癖のある奴が多くて読んでいて思わずニヤリとさせられる事も。肩肘張らずにエンタメとして楽しめる良作だと思う。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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