カタリベは黒電話の向こう側に・地図十行路『お近くの奇譚 ~カタリベと、現代民話と謎解き茶話会~』

 

 多分、黒電話がリアルタイムで家にあった世代というと、自分達の世代が最後なのではないかと思う。ちなみに自分は30代半ばだけど。そして、夏休みといえばお昼の番組で『あなたの知らない世界』等の怪談話がやっていた、というのも自分達の世代が最後だったのかなと思う。
 なぜこんなジェネレーションギャップ話から入るかと言えば、「黒電話」と「都市伝説(現代民話)」が本作にとって重要な要素だからだ。

 物語の舞台となる「異角」と呼ばれる町には、公衆電話という訳でもないのだろうが、古風な黒電話があちこちに置かれている。ただ普通と違うのは、その黒電話にはダイヤルが付いていないという事。本来ならばどこにも繋がる筈のないその黒電話は、『カタリベ』と呼ばれる謎の人物に繋がる電話なのだという。カタリベは黒電話を使って街の噂話を集めているのだと言われ、もしもカタリベからかかってきた電話を取る事が出来れば、彼が集めた異角の噂話、いわゆる都市伝説を聞く事が出来るのだと言われている。ただし、噂話を聞こうとする者は気を付けなければならない。カタリベが語る噂話の怪異は、やがて現実になるのだから。
 もしも怪異に巻き込まれてしまったとしたら、そこから抜け出す方法はひとつだけ。それはカタリベに『噂話を語り替えてもらう』事。ただカタリベに噂話を語り替えてもらうには条件がある。それはその噂話が本物の怪異から生まれたものではなく、誰かの創作、つまり偽物であると看破し、カタリベを納得させる事。もしも噂話の真偽を見誤った時には、貴方は貴方でいられなくなる……。

 あらすじはこんなところ。主な登場人物はカタリベの『招(まねき)』と『異角立郷土祭事管理組合事務所』の所長代理である少年、ハルこと温木晴生。そして高校生の少女、西来野久路。基本的に噂話の『鑑定者』はハルになる。タイトルにある『謎解き茶話会』とは、この3人が集まって噂話の真偽を鑑定する時に催されるお茶会を指している。何だか都市伝説を語る場にしてはほのぼのとしている感があるが、これは噂話の鑑定を行う際、ハルの左手の小指には黒い糸が結ばれ、その場を離れる事が出来なくなる為でもある。

 都市伝説を扱う話ではあるが、物語はホラー寄りという訳でもなく、どちらかというと町の噂話や誰かの作り話から都市伝説が生まれる過程等を追って行く内容になっているので「怖い話はちょっと……」という人も安心。カタリベの招も神出鬼没な謎の男であり「どんなに暑くてもフードを目深に被り、更にその下には目隠しまでしている」等、某「不気味な泡」を思い出す様な奇抜な出で立ちをしているにもかかわらず、普通に茶を飲んだ上にお茶請けに注文を付ける様な奴なので人外の恐怖とは程遠い。もしかすると単純に噂話が大好きなだけのマニアなんじゃないかと思わなくもない。まあ異能者である事は確かなのだろうけれど。

 というわけで、今「ダイヤルを回す」って言っても若い人には通じないかもしれないとか、妙なジェネレーションギャップを感じつつ読み終えた。都市伝説や奇譚に興味がある方は気軽に手に取ってみるのも良いかもしれない。

 

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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