絶望の深海からの浮上・らきるち『絶深海のソラリス II』

 

 色々な意味で作者のやりたい放題だった1巻については以前に感想を書いたけれど、あの、『どうあがいても、絶望』というTVゲーム『SIREN』のキャッチコピーがそのまま当てはまる様なストーリーから、そのまま2巻に繋がるとは思わなかった。前作の様な絶望感は薄まったけれど、ライトノベルとしてはまあ、これはこれで、という楽しみ方も出来ると思う。

 まるでモンスターパニック映画の様に、主要な登場人物達が一人また一人と怪物の餌食になって行った前作。前半の学園モノパートで描かれる彼等の日常と、後半でのゴア描写の落差が前作の持ち味だった。登場する怪物に対する事前情報も一切無く、得体が知れない敵に襲われる登場人物達が迎えた凄惨な結末は、その手の物語が好きな読者にとってはある意味たまらないものだったと言える。悪趣味だけど。

 自分は、2巻が出るとすれば登場人物の総入れ替えもあるかなと思っていた。ホラー映画やモンスターパニック映画の醍醐味のひとつとして、「(登場人物達にとって)敵の正体が不明である」というものがあると思うからだ。

 前作で主人公達の脅威だったクリーチャー群。敵がどんな能力を持ち、どう対処すれば倒す事が出来るのか、といった情報を持たない状態で会敵した彼等は、深海の研究所内という逃げ場の無い閉鎖空間で絶望的な戦いを強いられる。しかし今作では、ある程度敵の素性も割れている状態で、こちら側から敵地に攻め込むという展開になっており、モンスターパニック映画的な恐怖は薄れた。言い換えればホラー系のアクションゲームを初見プレイする時に感じる恐怖と、同じゲームを何度もクリアした後で、敵の素性や配置を熟知した状態でプレイする時に感じる恐怖では、前者が上回る様なものだと思う。

 シリーズもののホラー映画では、命を狙われる登場人物達は作品毎に一新され、「視聴者である自分達はストーリー展開についてある程度の情報を得ているけれど、登場人物達は全くの初見で襲われる」という展開になる事がままある。それも恐怖感を薄めない為の処置だと思うのだけれど、それでもシリーズを何作も重ねて行けばどうしても陳腐化して行く訳で、難しいところだなと思う。

 話を本作に戻す。敵の素性がある程度割れている事と、ゴア描写が前作ほど酷いものではない事等から、幾分『普通のライトノベル』寄りになった本作。ところどころに挿入されるラブコメ的展開や、登場人物の高所恐怖症等、コミカルな部分も強調され、「前作のストーリーは絶望的過ぎてちょっと……」という読者にはむしろ調度良いバランスになっているのではないだろうか。逆に、前作の絶望具合が調度良かった自分の様な読者からすると、「本作がいわば前作の学園モノパートであり、次巻でまた徹底的に落とす」という1巻を上回る規模の絶望的な展開を期待してしまう。あとがきによれば「次は近いうちに」との事なので、それが本作の続編になるのか、新しいシリーズになるのかは分からないけれど、今から期待しておこうと思う。

 

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