原作の強度を穿つ作品群・ハヤカワ文庫JA『BLAME! THE ANTHOLOGY』

 

 『BLAME!』が好きなんです。
 というか弐瓶勉作品全般が好き。語る事はほぼその一点に尽きる。

 『BLAME!』はもちろん、『NOiSE』『ABARA』『BIOMEGA』を読んでいた頃は、その後の『シドニアの騎士』である種のブレイクが起きて、それがアニメ化され劇場作品になり、という流れまでは想像できなかった。そして今最新作である『人形の国』が刊行されている。もちろんこれも大好きだ。

 『シドニアの騎士』の時、正直「これまでと少し変わって随分取っ付き易い作品になったな」と感じた。ロボット物だし、ヒロインは出て来るし。自分は弐瓶作品でいわゆる「サービスカット」的なものが拝める日が来ようとは思っていなかったので、その辺もちょっと動揺した。まあ『ブラム学園!』みたいな異色作もあるにはあったけれど。

 ただここで、「インディーズバンドの頃はファンだったけれど、メジャーデビューして売れ出したらむしろ『日和った』みたいな捉え方をしてアンチに回る『あの頃は良かった』的な拗らせファンムーブ」をするのはちょっと違う気がする。ファンとして、原作者の知名度が上がり作品が売れ、また新たな作品が世に出て来る事の喜びはやはり大きい。

 模型業界でも「『艦これ』がヒットしたお陰で軍艦プラモデルの新作が発売されて嬉しい。艦これやった事無いし艦娘一人も知らないけど!」という方がいる様に、形は何であれヒット作が出るという事はそれが次に繋がり、ファンが喜ぶ展開が待っているという事でもある。だって『BLAME!』が劇場アニメ化ですよ。その上こんな小説アンソロジーも出る。作家陣も凄まじい。見よこのラインナップ。

 九岡望「はぐれ者のブルー」
 小川一水「破綻円盤 ―Disc Crash―」
 野崎まど「乱暴な安全装置 ―涙の接続者支援箱―」
 酉島伝法「堕天の塔」
 飛浩隆「射線」

 ここまで著名な作家陣が皆『BLAME!』世界を書く事って多分もう今を置いて他にないタイミングなのではなかろうかと思う。正統派から問題作まで幅広い。時に野崎まど氏はなぜBLAME!の世界にそのネタを混ぜようと思ってしまったのか。BLAME!の小説を読んで腹を抱えて笑う日が来ようとは思わなかった。ずるい。悔しいけど面白い。

 以前、柞刈湯葉氏の『横浜駅SF』を読んだ時も思ったけれど、これだけ個性的な作家が小説化して好き勝手にいじっても原作の世界観が破綻しないというのは、それだけ原作の『強度』があるという事なのではないかと思う。霧亥のキャラクターはもちろん、重力子放射線射出装置や、果てしない広がりを見せる巨大建築群。統治局、セーフガード、珪素生物、ネット端末遺伝子。それらが織り成す重厚な世界観が持つ強度。それは超構造体のそれの様に強固だ。そこに各作家が自分なりの傷を付ける、或いは穴を穿つ為には、それこそ重力子放射線射出装置の様な強烈な一撃を見舞う必要がある。そして本著では、どの作品でもそれがしっかりと成し遂げられている。

 という訳で、『BLAME!』好きとして、また本読みとしてもこれ以上お得な小説アンソロジーは無いのではないかと思うので漫画と一緒に買いましょう。次は何と冲方丁氏による長篇小説『小説BLAME! 大地の記憶』も待っているので目が離せません。弐瓶勉作品を未読の方は、今なら取り敢えず『人形の国』から入るのも手だと思うので良いタイミングだと言えます。そして今後も自分は手を変え品を変え、弐瓶勉作品を宣伝するつもりです。主に自分がファンとして得をする為に。

 追伸
 『ブレードランナー 2049』の予告編で、デッカードブラスターを構えて暗がりから出て来るデッカード=ハリソン・フォードの絵面はベタだと言われようが何と言われようが格好良い事この上ないので、重力子放射線射出装置も早い所市販して下さい。全国のBLAME!ファンの霧亥ごっこが捗ります。

    

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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Author:黒犬
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地方の片隅で今日も黙々生息中。

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