心の中の『勇者』を消して 『ラブプラス』考察

 G.A.W.『[雑文]「ラブプラス」に感じるごく私的な違和感』

 上の記事を読んで、自分の中で腑に落ちなかった部分が整理されていると感じた。多くの部分で共感出来、おかげで自分の考えが整理出来た。予め断っておくと、自分はこのゲームをプレイしていない。

 自分もゲーム好きなので、『ラブプラス』というゲームが何だか売れているらしいという事は耳にしている。平たく言うと恋愛シミュレーションゲームなのだけれど、ゲーム中の女の子がプレイヤーキャラの名前を呼んでくれるという機能が実装されている為か、『本名でプレイすべし』という流れが出来つつある。その方がよりこっ恥ずかしい、もとい臨場感あるプレイが出来るよ、という事なのだろう。実時間とゲーム内時間がリンクしている事もあり、片時もDSを手放せないプレイヤーも居そうだ。

 でも自分はそういう流れに乗れそうもない。名前を呼んでくれる機能については素直に昨今のゲームの進歩は凄いなと思うけれど、そもそもこの手のゲーム自体自分はあまりやらないし、本名を登録するとなると更に抵抗感がある。

 この流れに乗れている人達と、乗れていない自分とは一体何が違うのだろうと考えていた。単純に恋愛ゲームをプレイする人とそうでない人という違いは当然あるとしても、何だか川の対岸でお祭りをやっているのを、こちら側の岸に立って眺めている様な気分だ。楽しそうではあるし、興味もなくはない。ただそれは川によって隔てられていて、自分とは関係ないものとしてそこにある。その川がルビコン川である可能性はあるけれど、意を決して渡ってやろうという気も何故か起きない。いや、逆か。自分がかつていた向こう岸から、川を渡ってこちら側に来たんだろう。そして今がある。

 ゲームキャラに自分の名前を付けて、というよりも、自分がゲームの主人公としてその世界に没入できるというのは最高の娯楽だと思う。でも、自分にそれが出来た時代はもう通り過ぎてしまった。自分は既に川を渡り終えていて、あの祭りの輪には加われない。

 そもそもゲームキャラクターに自分の名前を付けても違和感が無かった時代というと、自分の場合は『ドラゴンクエスト』まで遡らなくてはならない。当時小学生だった自分や同級生達は、当然の様に勇者の名前として自分の名前を入れた。名前が長くて4文字に収まらないという奴は少し残念そうだったが、でもそれも自然と卒業して行ったと思う。ゲーム自体を卒業する奴もいたし、ゲームを趣味として続けた自分の様な奴も、自分の名前をキャラクターに付ける事はしなくなって行った。自分を勇者とするには気恥ずかしさが勝る様になった。

 そこには決定的な何かとの決別や、それこそルビコン川を渡る様な決意があった訳ではない。自然とそうなって行ったというだけの話だ。

 なぜかつて勇者だった少年達は、自分の中の勇者を消して行くのだろう。それまで勇者は自分自身で、2で仲間になるサマルトリアの王子は仲の良い友人や兄弟、ムーンブルクの王女はクラスでちょっと気になるあの娘だったりしたのに。3で登場したルイーダの酒場はクラスの人間関係の縮図だったのに。

 当然、自分が勇者なんかじゃないという事は、成長する中で自明になって行く事だ。成長するという事が自分を知るという事であるなら、ある程度成長した人格は自分を過大評価する事に対して気恥ずかしさを覚える様にもなる。『将来なりたいもの』に仮面ライダーとかウルトラマンとか戦隊ヒーローとか書いていてもいいのは多分幼稚園までで、自分が世界を救う勇者であっていいのはきっと小学生までなんだろう。

 ならば、俺にだって彼女がいてもいいという認識を持てない自分の様な人間は、本名で恋愛ゲームをプレイするという事も当然出来ないという、突き詰めればそれだけの話なのだ、これは。

 それは自分の場合、単純に非モテであるという事だけではなくて、『自分が女性とお付き合いとか、ちょっと考えられないんですが』という自己認識が根本にある。たとえ奇跡的に自分の様な人間を好いてくれる奇特な人が現れたとして、それでも『あり得ない』と感じてしまう位、その認識は根深い。『付き合ってくれる人がいない(でも機会があったらお付き合いはしてみたい)』とか、そういう次元ではない。自分にとって、現実だろうが架空だろうが、相手がいるお付き合いなんてものは想像の外にある。そっちの世界に行こうと思うなら、川を渡る覚悟どころか宇宙服を着込まなければ多分死ぬ。

 ゲーム一つに何を大袈裟な、と言われるだろうが、自分にとってはそういうものなんだろう。自分は恋愛に値しない。その当事者である事はもちろん、それを語るにも値しない。かつて少年達が心の中から勇者を消した様に、自分は今に至るいずれかの地点で恋愛というものを消したんだろう。そこには重い決断も無ければ決定的な決別も無かった。自分は自然にこうなった。ならばこのまま生きて行くより他に道は無いのではないかと思う。
 いや、まさかそれをゲームによって再認識させられるとは思っていなかったけれどね。

テーマ : ラブプラス
ジャンル : ゲーム

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Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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