古書店通い

 日曜日、友人と久しぶりに古書店をまわった。といっても今は皆ブックオフの様な業態の店舗になってしまっていて、中古ゲームやDVD、CD等も取り扱っている所が多い。利用者にとっては便利になったのかもしれないけれど、ちょっと味気ない。

 店の主人が奥のレジにじっと座って客を見ている様な昔ながらの古書店で、客同士すれ違うのも気を遣う様な幅で並べられた本棚の間を縫う様に目当ての本を探したりするのもそれはそれで楽しいのだけれど、やはり一般的には広々とした店内で、作家別、価格別に整頓された中から本を買う方が買い易くていいんだろう。

 学生時代は本当によく古書店を利用していた。でも、古書というか中古品一般について『何で他人の手垢が付いた様なものを金を出して買うの?』という価値観の人も中にはいて、そういう人に古書店で買った本の話などをすると大層気味悪がられた事を思い出す。面と向かって「よくそんな汚い物を買う気になるね」とか言われるとちょっと悲しいけれど、逆に自分が古書に抵抗が無い人間で本当に良かったと思う。作家さんに印税と言う形で利益が還元されないのが難点ではあるけれどね。

 ジョン・ダニング『死の蔵書』の冒頭に登場するキャロルの言い草『ヘミングウェイは、安いペーパーバックで読んでも、五百ドルの初版本で読んでも、同じように面白い』ではないけれど、自分にとっては捨て値で買った古本も新品で買った本も同じ様に面白い。

 今回は以下の本が手に入った。

 ハヤカワ文庫 ディーン・R・クーンツ『ファントム』上下巻
 新潮文庫 T・R・スミス『チャイルド44』上下巻
 角川文庫 桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
 集英社文庫 三崎亜記『バスジャック』

 他にもハヤカワ文庫 フランク・シェッツィング『深海のYrr』『黒のトイフェル』があって、まとめて買ってしまおうかと思ったのだけれど、流石に買い過ぎかと思って自重した。そちらはまた今度という事で。
 買ったものは皆安かったのだけれど、特にクーンツの『ファントム』は破格だった。何と1冊50円、しかも税込みで。100円でこれが読めるのであれば、本が日に焼けていようが気にしない。

 何より嬉しいのは、自分が日本人に生まれた事かも知れない。義務教育のおかげでほとんどの日本人は読み書きが出来るけれど、自分もその恩恵でこうして好きな本が読める。それは日本人に生まれた自分にとっては当然の事だけれど、世界に目を向ければまだ識字率の低い国だってあるし、表現の自由が制限される国だってあるだろう。そんな中で日本人であるという事は、もうそれだけで本読みとして恵まれている。

 50円の古書でこれだけ喜んでしまえる自分はきっと安上がりな人間なんだろうけれど、それでも本も読めない暮らしをするよりはずっといい。

テーマ : 雑記
ジャンル : 小説・文学

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Author:黒犬
映画と小説を主食に生きている。
地方の片隅で今日も黙々生息中。

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